やた

カフェ・ソサエティのやたのレビュー・感想・評価

カフェ・ソサエティ(2016年製作の映画)
3.4
「同じ名前を持つ二人の女性を愛してしまって…」という予告だったけど、全くそんな映画ではなかった。
舞台も映像も音楽も華美でおしゃれだけど、物語はとても淡々としていて現実的。そのギャップが良かった。
詰め込まれたエピソードをそれぞれドラマティックに描くこともできるのにそれをせず、大きな盛り上がりも大きな悲しみもない。それがこの作品の魅力だと思う。

昔の恋を引きずったり、再燃させたりするのは「純粋に真剣に愛していたから」というよりも、時を経て、その人と一緒に過ごした時の自分や環境、その時の自分が思い描いていた夢が、今の現実と遠く離れて特別に思えるせいだと私は思う。
ボビーにとってヴォニーは、故郷を飛び出したばかりの頃、刺激的な街で出会った都会にスレていない超美人。
ヴォニーにとってボビーは、道ならぬ恋に疲れた時に出会った、恋人と正反対の魅力を持ち、恋人と違って穏やかな時間をくれる人。
再会した時に二人は地位や名声、金も家族も手に入れていて、満たされている。今が満たされているから、満たされていなかった頃が輝いて見えてしまう。満たされていないからこそ夢を持てた頃に出会えた相手を、特別だと想ってしまうんだろうと感じた。
お互いにまだ恋しているのではなく、「こんなに色々手に入れたのに満たされない自分」に酔っている。
ラ・ラ・ランドより、冷静に恋と夢の残酷さを描いていると感じた。

ヴォニーがあまりにも美人で、いつまででも見てられるほど。ただ、リボンのカチューシャとかフリフリの服はびっくりするほど似合ってなかった…
ボビーが、よくある冴えなくて優しいだけが取り柄であんまり役に立たないけど一所懸命…みたいなテンプレ主人公ではなく、世渡り上手で口が上手くて商売の才能があって、というキャラだったのが意外性があって面白かった。
ヴェロニカは全てにおいて2番目に出会うべくして出会った女、という感じ。ありあまる色気を愛嬌で包み込んだような雰囲気が素敵だったので、もっと見せ場が欲しかった。
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