カツマ

愛を綴る女のカツマのレビュー・感想・評価

愛を綴る女(2016年製作の映画)
4.0
チャイコフスキーの旋律が忘れえぬ人の面影を連れてくる。燃え盛る激情、愛の嵐、それら全てを抱き締めるのは真実の愛だった。愛し方も分からなかったある女性が、本当の愛に出会うまでを描いた物語。人は感情に流され、どこまでも漂流していくけれど、必ずどこかの岸辺には辿り着く。その先で待っている人がいるとしたら、その人こそが運命の人なのかもしれない。

マリオン・コティヤールがある女の一生を官能的かつ情熱的に演じ分け、それを束ねるのはフランスの大女優であり監督としても高い名声を誇るニコール・ガルシア、という盤石の布陣。南仏の美しい景色とマリオン・コティヤールの美貌に魅せられて、小説の中の世界がそのまま浮き上がってくるかのような、エレガントで気品溢れる映像世界も魅力的な作品です。

〜あらすじ〜

そこは1950年代の南仏プロヴァンスの小さな村。若く美しいガブリエルは既婚者の教師への片想いに破れ、その激しい情緒は家族の手に負えないほどとなっていた。母アデルはそんなガブリエルに手を焼いており、母子の仲は常に一触即発状態、ガブリエルも母のことを嫌っていた。
そこへ流れ者の日雇い労働者のスペイン人、ジョゼがやってくる。彼がガブリエルに惹かれていることに気付いたアデルは、ジョゼとガブリエルを強引に結婚させることに成功するも、二人の間に愛などなく、ガブリエルはジョゼに『愛してない』という言葉を投げかけた。
二人だけの生活は愛は無くとも破綻はせず流れていく。その中でガブリエルは妊娠するも、腎臓結石が原因で流産してしまう。そこでジョゼはガブリエルを温泉治療のためにアルプスへと向かわせる。そこで彼女に運命の出会いが待っているとも知らずに・・。

〜見どころと感想〜

激しい情緒と情熱的な求愛で常に妖艶な魅力を振るまく主人公ガブリエルを、年齢を全く感じさせない大女優マリオン・コティヤールが圧巻の熱演で魅せる。マリオンに完全に支配された画面の中にあって、一粒の砂塵を巻き起こすのは、折れそうなほどに繊細な存在感を放つルイ・ガレル。この二人のフォルムは完璧で、眩しいくらいの光沢に目が眩むほどだった。

しかし、それら名優たちのインパクトをもってしても最終的にこの映画で最も印象に残るのはジョゼである。この映画は美しいラストシーンを持っていて、彼の最後の言葉にこの映画の全てが詰まっていたと言っても過言ではなかった。

そこには大きな愛があった。ずっと、長いこと気付かないまま。愛を綴っていたのは彼女だけではなかったのだ。

〜あとがき〜

この映画の景色はずっと美しい。にも関わらず、ラストシーンでその美しさにハッと気付かされるほど、終わり方が素敵な作品でした。フランス映画は癖がある作品も多いですが、この作品はかなり王道なドラマなので、是非ともその瑞々しいラストに浸ってほしいと思える作品でした。
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