カツマ

わたしは、ダニエル・ブレイクのカツマのレビュー・感想・評価

4.2
ケンローチが渾身の力を込めて送る重厚な一撃。主人公ダニエルブレイクの視線から社会の裏側を悲痛なまでの現実味で描き出す。映画化した意義を十二分に感じられる圧倒的な力作です。

心臓発作で一時的に働けなくなったダニエルは支援を受けようと役所に駆け込むが、電話ではたらい回しにされ、役所に話をしに行けば制度の話をされ、ネットの手続きにも四苦八苦することに。そんな彼の折れない声と心が社会の闇として溜まる膿をほじくり返し、現状への痛烈な問題提起として放たれています。

こんな状況でもダニエルは隣人に手を差し伸べ、困っている人達を絶対に見捨てたりしない。腐らず真面目で優しい人達がバカを見る世の中なんてクソだとはっきりと国や制度に中指を立てたケンローチの怒りが伝わってきた。決して爽快な終わり方ではないし、この先どうなるのか全ては闇の中だが、無音で鳴らされるエンドロールには伝えるべきメッセージは伝えた、というサインのように感じた。あとは鑑賞者がこの作品をどう咀嚼するかにかかっているのだと思います。
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