LalaーMukuーMerry

十年のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

十年(2015年製作の映画)
4.3
10年後の香港の様子(制昨年が2015年だから2025年の様子)を予想して、5人の若手監督が描いた小作品のオムニバス。どれも次第に入り込んで来つつある中国共産党によって香港がディストピアに変貌する過程で起こるであろう日常を、鋭利に切り取って描いた作品です。もともと自主上映作品でしたが、香港では口コミで大ヒット、映画賞をとりました。授賞式番組は本作のノミネートを受けて、中国本土では当然?急遽放送中止。中国メディアは酷評したといういわくつき。
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         副題(勝手に私がつけたもの)
1. エキストラ 「国家安全条例」を成立させるには
2. 冬のセミ  家を重機で壊された人は・・・
3. 方言    消される広東語
4. 焼身自殺者 文化大革命と天安門事件の続き
5. 地元産の卵 よくない言葉 ~少年団の洗脳~
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1997年、香港はイギリスから中華人民共和国に返還。一国二制度のもと香港では50年間は社会主義政策を行わないと鄧小平は約束した。50年後の2047年までまだ半分過ぎてないこの時期に、こういう作品が出来るということの意味を考えたい。習近平が指導者になってからの中国は、これまで隠してきた共産党の本性というか体質を鮮明にしてきた気がする。
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ソ連は生まれた時から西側諸国と敵対したが、中華人民共和国は第二次大戦で日本と戦ったという理由で西側連合国の中に席を確保してうまく立ち回ってきた(実際には日本と戦ったのは主に国民党軍(つまり中華民国、台湾)、中華人民共和国ができたのはWW2後の1949年)。
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1971年に国連安保理の常任理事国は中華民国(台湾)から中華人民共和国にかわり、「一つの中国」論に押されて台湾は国連の席を失った。西側諸国も、開発途上国だからとたかをくくって、中国のわがままを大目に見てきた。そこにつけこんでというか、巧妙な手口で西側の制度や技術を吸収し、でも共産党独裁は残したまま、いつの間にやら経済力も軍事力もつけてきた(そこは中国の底力と認めるべきでしょうけど)。力をつけてもわがままなまま、国際ルールを自分勝手に解釈して行動し始めた中国に、今や西側諸国はロシアよりも手を焼いて脅威を感じている。
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香港の次は台湾。そんな風にいわれることに香港の人たちは憤慨することだろう。

もう手遅れだ、いや、まだ間に合う

チベットやウイグルの二の舞になるかもしれない香港に、世界ができることは何だろう?