LalaーMukuーMerry

ハクソー・リッジのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
5.0
これは、とても衝撃の大きな映画だった。(衝撃が大きいと自動的にスコアが跳ね上がるマイルールによりこのスコア)
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タイトルの“ハクソーリッジ”とは英語の地名(弓のこような尾根)、日本語では前田高地、沖縄本島那覇市の北、断崖の上にある浦添城跡。この地で行われた沖縄戦の激戦を描いた作品。
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「プライベート・ライアン」の開始30分ほど続く激しい戦闘映像は凄かったが、あれに勝るとも劣らない凄まじい地上戦の様相が、後半開始早々これでもかと続く。地獄絵図に耐性のない人にはオススメできないかもしれないけれど、そこはぜひ我慢して、アメリカ軍の衛生兵デズモンド・ドスの神がかり的な行動を記憶にとどめておくべきでしょう。これ実話か~!!!
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前半は、彼の生い立ち、父親との関係、奥さんとの出会い、入隊した軍隊での訓練の様子。「愛と青春の旅立ち」と同じ鬼教官のしごきだと思っていたら、ライフル銃を使う訓練で急にデズモンドが銃を拒否すると言い出して、話が妙になってくる。信仰心の篤い彼は、衛生兵になってアメリカのために尽くしたいと「良心的兵役拒否」をした。同僚の訓練兵から白い目で見られ、上官からも嫌がらせを受け、追放されそうになる。軍法会議も父親の助けのおかげで、なんとかあっけなく切り抜ける。こんなにこじれる前に少しくらい信念曲げても、とわたし的には思いましたが・・・
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そんな彼が戦地に派遣され、いくらなんでも戦場で銃を待たない筈はなかろうと思ってましたが・・・。
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ハクソーリッジ(前田高地)の激戦は、1945年4月26~5月6日。前田高地の上を日本軍が守り、彼の部隊は崖を大きな縄梯子で登って攻略しようとする。崖の上は地獄のような戦場だった。デズモンドがこの戦地に到着し、ここを離れるまでわずか4日間、その2日目の夜、上にとり残された負傷兵たちを、夜通しかけて、たった一人でロープを使って崖の上から下の米軍キャンプにおろし続けた。その中には日本兵もいたという。その一夜の行動が彼の人生を変えた・・・
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激戦の最前線で、自分の命をかえりみず、衛生兵の仕事を懸命にやり通す姿にはただただオドロキ!「信仰が強い」、「信念を貫く」といった生やさしい言葉をはるかに超えた行動、「衛生兵の鏡だからみんな見習おう」なんてとても言えない。回りの兵士達も彼を見る目が一夜でかわる・・・
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この作品は米軍の視点で見た沖縄戦だったが、こんなにも激しい戦闘があったとは知らなかった。よく見る映像は圧倒的に米軍優勢の戦いのものだし、日本軍の沖縄戦の映像は見たことがなかったから。多くの住民が亡くなった悲しい逸話はよく聞いていたが、沖縄戦のことを私はまだまだ何も知らなかったようだ、他の沖縄戦の作品ももっと見なければ・・・