ベルサイユ製麺

鋼の錬金術師のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

鋼の錬金術師(2017年製作の映画)
2.8
まるでハイビジョンのデモ映像のような、ただ綺麗なだけの、無味無臭の空撮シーンのオープニング。ここに全てが込められている気がするよ…。
バリバリのアジア人の子供が、汚い金髪で母親からエドとかアルとか呼ばれている。草原を駆け回る少年たち。パッと見は爽やかな洗剤のCMの様だけど、目を凝らすと平べったい顔にギシギシの金髪…。凄く無計画な大家族っぽい感じ。

原作は最後まで読んだのか、最終話だけ読んでない(そういう癖があります)かで、めっちゃくちゃ良い作品との認識は有るのだけど、細部は記憶しておりません。でも、原作物を楽しむにはそれくらいの距離感が良い様な気がします。個人的には“意外と良かった”が、一番嬉しいな。

本編、現時点のパートになりまして、青年エド。エド役、山田涼介さん、多分初めて見ました。ふむふむ、イケメンが金髪のヅラ被ってると宝塚感有りますね。演技の事は、分かりません!演技の事なんて何にも分からないの‼︎…OK?
で、追いかけっこなどしたり、CGのアル君が歩くんですけど、えーと、出し物感? 凄いよ!
アジア人丸出しの人々が西洋風の扮装で、全くエイジング感の無い西洋風建築の前で、ややオーバアクトな演技(←演技の事、全然分からないですけど!)。いやーん、なんか恥ずかしい…。例えば、チボリ公園とかでサプライズのフラッシュモブ(きっとプロポーズかなんかだろ…ケッ)に巻き込まれ事故、って感じです。
以降、それなりの芸達者さん達がワイワイやってて、割とスイスイ話が進みます。お話の構成、展開は然程気にならないなぁ。(引っかかるほど集中して見れない…とも)

…お、終わったな。
えーと、お話は割とそれらしく出来てるのでは無いかしら。個人的には漫画原作をカッチリ実写化出来るのって5〜600ページくらいが限度に思えているのですが、この映画は原作のボリューム感の割にはお話が上手く流れてる風。いくつかのフックになるエピソードは、原作の手柄には違いないけれど、ちゃんと心に残りました。
曽利監督作品、観たことないかと思ってましたが、『ピンポン』の監督なのですね。アレは面白かったと言わざるを得ない。以降のフィルモを確認すると…、filmarksのレビュアー的には“否”の様です。何か有ったのだろうか?脚本に凄く左右される?

とにかく、今作に関して言えば話運びは“こんなもんでしょ”感。で、トータルの感想は、…虚無です。無味無臭。毒にも薬にも。目を背けたくなるほどの、或いは身を乗り出す様な場面もありません。と、これは原作ホドホドファンくらいの感想であって、原作愛が強ければ強いほど“否”の気持ちが大きかろうね。
何がそんなに虚無に思えたかと言えば、ひとえに目に映るもの全てがテキトーである事です。ペラペラの衣装も、モブ達の無国籍感に寄せる努力の無さも、既製品の絨毯も、全てが間に合わせ。CGに至っては、まるでプレビズをそのままのっけたみたいにフワフワツルツル。実在感のカケラもない。
いや、元々無理筋の実写化である事は分かっているのだけれど、製作者側がその駄目元感にのっかって、誰も責任を取る気が無いように思えてなんとも遣る瀬無く感じてしまいました。

…版権、ハリウッドなりNetflixなりが買ってくんないですかね?ちゃんと魂の込められた実写なら、ソレがハガレンだろうがFULLMETAL ALCHEMISTだろうがどっちでも良いですよ。変な学芸会みたいのより絶対マシ。(邦画としては)大作バジェットをつぎ込んでファンを怒らせるだけなんて、勿体なさ過ぎてきっとバンクシーでも堪らず「アカンテ!」って声出ちゃうよ。

…山田涼介さんは、もう文句無し!良い。良い・ストームです!…OK?