だいすけ

アルジェの戦いのだいすけのレビュー・感想・評価

アルジェの戦い(1966年製作の映画)
4.0
アルジェリア戦争を描いた史実作品。ジャーナリストを前身とするジッロ・ポンテコルヴォによるモノクロの本作は、もはやドキュメンタリーである。エンニオ・モリコーネの音楽とあいまって、片時も休止を許さない緊迫感が持続している。

ネオレアリズモの遺伝子を継承する本作の映像は、リアリティにあふれる。実際にアルジェリア戦争に参加した一般人を素人俳優として多く起用するなどの工夫が功を奏している。壮大な再現映像といえるだろう。画面は生々しい混沌に支配されている。爆破テロのシーンなど、どう見ても現実としか思えないほどのクオリティだ。

ドキュメンタリータッチが感情移入を妨げているのも理由の一つだろうけど、フランス人とアラブ人のどちらにも肩入れする気にはならなかった。大元をたどれば、アルジェリアを植民地化したフランスに原因がある。フランス人もアラブ人を「ドブネズミ」と差別していた。ゆえに、アルジェリアが独立を指向すること自体はまっとうなことだ。しかし、FLNがテロという強行手段に訴えたことは残念でならない。結局、両者の間の憎しみの連鎖が強化されていく。武力は無力だ。

パリ同時多発テロはいまだ記憶に新しい。これもフランスによる植民地支配の歴史が尾を引いていると思う。本作は、決して昔話ではなく、教訓として語り継がれていくべき名作である。
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