和桜

アルジェの戦いの和桜のレビュー・感想・評価

アルジェの戦い(1966年製作の映画)
4.2
フランスの植民地支配下にあったアルジェリアの様子や、人民解放軍による独立戦争をドキュメンタリータッチで描く。
公開当時は強烈な反植民地映画として評価されたが、文脈は違えどテロが身近となった現代から見ると抵抗組織のテロルに恐怖を感じることもある。
観た人の反応も千差万別。時に恐ろしくなる意見もあるが、時代が変わり見方が変わっても、新たな議論が生まれる。これこそが戦争映画のあり方なのかもしれない。
そしてこれもまた映画の役割なんだと実感できる。フランスのテロを日常に感じる現代だからこそ見て欲しい、まさに戦争映画の金字塔。

これが50年前の作品だと言うことが驚きだし凄まじい。レジスタンスや参政権獲得の過程はテロルの歴史でもあって、今の映画ではテロへの含みを持って描かれることもある。
だけど50年も昔、しかも独立直後の雰囲気の中でこれだけの視野を持てていた人は殆どいなかったはず。監督本人が反ナチのレジスタンスであったためか、同じレジスタンスであった軍側の中佐の主張も整然と語られているし、この監督の意図が本当に気になる。

この映画は当時ベネチア映画祭で上映された際に、トリュフォー以外のフランス人が途中退席するほどの反仏映画と見なされたらしい。だけど今見ると両者の姿がきちんと描かれているし、むしろ無差別テロに怯える現代人からすると、テロへの恐怖すら感じる。
これは悪の立ち位置が入れ替わったわけではなく、正義や悪といった概念自体がかなり曖昧で、絶対的ではないことを歴史的な事実として示してくれる。
公開当時と現代の反応を比較すると時代の変化を如実に感じられて色々な発見がある。今撮られてる映画も、半世紀先にはまた違った評価を得るんだろうなと恐くもあるが楽しみにもなった。

反ナチのレジスタンスとして闘った中佐や、強制収容所を生き延びた人間が、今度はフランス兵としてアルジェリアの独立派を弾圧する。それに呼応して加熱する街中でのテロ。
50年前の独立直後の中で両者をありのまま描き、ノーランやキュアロンを始め多くの監督がそのリアリティに影響を受けたと語る。ノーランの『ダンケルク』やキュアロンの『ローマ』も、最初は意図が見えづらくて困惑したんだけど、こうした映画に影響を受けていたのかと改めて見返したい。
和桜

和桜