トリックスター的な小狡い新聞記者の主人公にダン・デュリエをあてるという配役の妙。脚本もいい。マフィアに借りた金で地方新聞社の共同経営にありついたデュリエが、特ダネを大手通信社に2台の電話で同時にカマかけて売ろうとするなど小狡さを十分に見せつけながら、殺人事件の容疑をかけられた黒人メイド(全く黒人ではなく…それらしいメイクすらしておらずホワイトウォッシュにも程があるが)の無実を証明するために、いつの間にか報道の正義を貫こうと奔走している。その変化が面白い。大手新聞社長の御曹司が事件の真犯人であることを隠蔽するためのメディア操作やそれに踊らされる市民、マフィアとの取引で緊迫感が出て、新聞社長も最終的に社会的地位や非情な息子よりも人としての道理を選ぶ。
真実や社会的意義よりも、目を引く扇情的な見出しのゴシップで部数を上げようとする新聞というのは、実際に当時のアメリカではそっちの方が主流だったと何かで読んだ。原爆神話について書かれた本だったかな。