OASIS

哭声 コクソンのOASISのネタバレレビュー・内容・結末

哭声 コクソン(2016年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

平和な村に1人の怪しい日本人が現れた事によって巻き起こる不可思議な事件を描いた映画。
監督は「チェイサー」「哀しき獣」の鬼才ナ・ホンジン。

「ビー・デビル」や「黒く濁る村」等の韓国産田舎サスペンス・ミステリーに「エクソシスト」「エルム街の悪夢」等のオカルトホラーをミックスし、そこに若干のゾンビ映画の要素も加わってドロドロで血みどろな仕上がりだった。
頻発する怪奇現象を、村にやって来た日本人の仕業なのか?毒きのこによる幻覚作用ではないか?と多様な謎で包み真実を見えなくし、そして真相すらも曖昧なまま幕が下される。

スッキリとはさせてくれないが「疑いもそれを確信すれば真実足り得る」という劇中の言葉のように、人々の疑心こそが悪魔を生み出してしまうのだと言わんとしているのだろう。
平和な田舎の村という、人口が少なく過疎化した土地柄だからこそそういった疑いや不安も伝染し易い訳で、舞台設定の妙が映画に何とも言えない独自の雰囲気をもたらせていた。

中盤以降、ファン・ジョンミン演じるいかにも胡散臭い祈祷師が登場してからの、日本人、祈祷師、そして白い服の女の三つ巴の戦いが様々な解釈を産んで行く。
画面内に写っていたもののみを見ると、日本人が祈祷師とグルの悪であり白い服の女が警告を与える善であると考えられる。
日本人が市場で儀式で使う鶏を選んでいたり、祈祷師が呪いの対象者の写真を大量に持っていたりという2人の繋がりを示す場面があり共通点も多いのでグル説は揺るがないとは思う。
2人とも呪い殺す対象の写真を撮り魂を吸い取ろうとするような素振りを見せるので祈祷師も悪魔だったのだろうか。

日本人と祈祷師の両者が対決する後半の場面では、苦しむ娘のカットが挟まれる事によってあたかも娘を巡っての攻防が繰り広げられている風に見えるが、日本人側は死にかけた男をゾンビとして蘇らせようとしているし、祈祷師はあえて娘を苦しませるかのように釘を何度も何度も打ちつけたりする。
2人がお互いを対象にしているかのように見せて、実は目線は同じ目標に合わせられているといった編集の妙に惑わされてしまう部分があった。

ただ、白い服の女が頑なに真実や解答を語ろうとしない点に違和感がありストーリー的にも不親切極まり無かった。
自分に疑いの目を向けさせる事によって顕在化させようという目論見だったのか?
何にしろ、神を信じる者もいれば悪魔を崇拝する者もいるしで、信じる者がいる限りそれは存在し続けるのだろうという、信じている事を疑う、そして芽生えた疑いを信じる事について考えてしまう。

ナ・ホンジン監督の前作「哀しき獣」では複雑極まる人間関係に疑問が浮かんでくる事が度々あったが、今作ではその複雑さを併せ持ちつつも台詞に頼らず画面構成と演出で語り切る技が格段に増していたと思う。
とにかく韓国人ですら「夢の中に出て来る」とビビらせてしまうほどの國村隼の存在感が後を引く作品だった。
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