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if もしも・・・のSariのレビュー・感想・評価

if もしも・・・(1968年製作の映画)
4.0
ブリティッシュ・ニューシネマの作家リンゼイ・アンダーソン監督作。
第22回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作。

1960年代のイギリス。500年の伝統を誇る厳格な全寮制のパブリック・スクールで、抑圧された教育に対して違和感を抱く3人の生徒が徐々に反抗心を募らせる。やがて学校側も彼らを反逆分子として扱うようになる…。
監督生による体罰、下級生の酷使、同性愛、いじめなど、イギリスのパブリックスクールの実態を、妄想と現実を交えながらアナーキズムに結実させ、賛否両論を巻き起こした学園ドラマの問題作。



イギリスの階級社会を表した作品。
リンゼイ・アンダーソン監督の名を世界的に知らしめた作品で、俳優マルコム・マクダウェルの映画デビュー作である。

本作を5回も観たスタンリー・キューブリック監督は、主演のマルコム・マクダウェルを気に入り『時計じかけのオレンジ』(72)に起用し、後の数々の映画に大きな影響を与えた。

マルコム・マクダウェルの存在感はデビューで既にカリスマ性を放ち、本人が語る通り、彼の長いキャリアで最も重要な作品である。

この映画はカラーとモノクロを併用している。まず協会の撮影では光を多用しなければならないカラーでは予算不足だったため、モノクロで撮らざるを得なかった。
映画の序盤は自然主義的なカラーで始まり、章立ての構成で、モノクロのシーンが幾つか唐突に挿入される。リンゼイ・アンダーソン監督によるとブレヒト的効果を狙ったとの過激な妄想のモノクロシーンにより、切れ味が鋭い芸術性を付加している印象である。
(余談だが、リンゼイ・アンダーソン監督は映画批評家出身の気難しい性格と言われるが、伝統への反抗精神が作風として現れている。)

因みに、本作はジャン・ヴィゴ監督『新学期・操行ゼロ』に強い影響を受けている。
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