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破局のmingoのレビュー・感想・評価

破局(1970年製作の映画)
4.0
シネフィルに愛されるのもうなづける演出の数々。個人的には「野獣死すべし」がぶっちぎって良かったシャブロル特集。シャブやってんのかってくらい途中で登場人物も物語もジャンルさえも切り替わるからやはり計算されつくされている。真似しようと思っても無理ロル、、、ユーロとかで特集キボンヌ。

以下毎度お馴染みトークメモ

タロット夫人に無防備都市のマリアミチ。ドニミクザルディは今回も風船売りで登場。原作にある役柄。クルーゾーの地獄のリメイク版、愛の地獄のマリオダビッド。市街電車の客の中に舌を俯いて書き物をしている中年男性はシャブロル本人。原作はシャーロットアームストロング。ヘレンマクロイとかと並んで有名な女流作家。ノックは無用の原作者で知られている。2000年の甘い罠なども。フランス版タイトルはパルカたちの日。パルカというのは運命の女神をさす。シャブロルは亀裂という意味を入れたいからルプチュールになった。英語で言うとラプチャー。裂け目。
ブルジョワと労働者、階級問題を描いている。全般的なスタイルは滑らかにまとめあげるではなく、細かいヒビなどを演出し最終的にバラバラになってくのが多い傾向にある。暴力的。最初はエレーヌ主体で話がすすむが途中で主人公が変わって、レニエ氏が親権を奪う話に変わってくる、するとポールの語りになっている。ジャンル、主人公の亀裂。市街電車はムルナウのサンライズがモデル。ベルギーブリュッセルを舞台に決定。またミシェルブーケの経営してる会社がサンライズ。ラシーヌの引用からタイトルバック。冒頭はリンチばりの簡潔でシュールレアスティックなショット。夫と妻と愛人がエレーヌサイクル時代のシャブロルドラマ。どこか曖昧なのがシャブロル。本作は明確すぎる。善と悪がハッキリしており、原作の世界観を壊したくないから忠実につくった。
分身というのがまたもう1つのテーマ。エレーヌとソニア。エリーズにポルノを見させてエレーヌがしたと仕掛ける。2人の関係が混迷、ドッペルゲンガーである。金髪の分身はヒッチコックのめまいだし、ラングのメトロポリスに似ている。エレーヌのエロドラマとポールのスパイ映画の2つの側面がある。そうなってかもしれない、別の生き方をしたかもしれない。つまりエレーヌ=ポールでもある。赤い服を着たシャルルと孫ミシェルは跡取り。分身的であると考えられる。シチュエーションそのものが二重化している。オープニングとエンディングのところでエレーヌは朝食を食べている同じシチュエーションが繰り返されている。「パリところどころ」でのシャブロルの映画を繰り返している。市街電車は運命感を演出している。エディプス的な側面が語られる。レニエ帝国のブルジョワ、エレーヌ代表のワーキングクラス、ピネリ一家は中間層ミニブル。父権と母権の対立。子供の所有を巡る戦い。色彩決定によって物語が決まる。黒は色彩の欠如、冒頭の暗闇のラシーヌは黒。悪であり権威のことでありレニエに表象されるもの。ラスト、シャルルを刺したポールが廊下の奥に後ずさりしてる。その廊下の先は真っ暗であって、悪としての暗闇に吸い込まれてしまったとも捉えられる。青、青、青が大事。青いドレス、部屋の壁紙。幻覚の中でまだ現実にいるエレーヌ。
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