むらむら

サマー・インフェルノのむらむらのレビュー・感想・評価

サマー・インフェルノ(2015年製作の映画)
5.0
「怖いーっ!」じゃなく「うるせーっ!」と言いたくなる、いくらなんでも叫びすぎなホラー。

子供キャンプに参加するため、わざわざアメリカから指導員としてスペインの森の中へやってきた、飛んで火にいる夏の虫状態の四人組の男女が主人公。

こいつら、全員デスメタルバンドやってんじゃないか、ってくらい叫び声がうるさい。俺は実際、観てる途中、ホラー観てるのか大声コンテストの審査員やってるのか良く分からなくなってきた。絶叫系のホラーは嫌いじゃないが、最初っから最後まで叫びっぱなしって、どうなのよ……。

主人公たちがとある理由から凶暴化して、仲間を襲い始めるホラーは無数にある。この作品のミソは、凶暴化しても数時間経ったら「ハッ!? 俺、どうしてたんだ……!?」と我に返ってしまうこと。

周りを見回すと、自分がさっき襲った仲間が今度は凶暴化していて、逆に襲われることになる。次々に鬼が入れ替わる鬼ごっこが、映画として繰り広げられてる感じ。

主人公たちが絶妙にクズで好感が持てる。わざわざスペインまで来て、ほぼ全員スペイン語を使えず、英語で押し通そうとする俺様至上主義。おかげで全く感情移入することなく作品を楽しむことができた。

フォローしているSakiさんのレビューに「『グリーン・インフェルノ』は怖そうだったのでコチラを鑑賞」と書いてあったが、自分(アメリカ人)の知らない文化圏にズカズカ入り込んできてコテンパンにされるという点で、共通している気もする。

特にヒロイン立ち位置のクリスティーンが頭一つ飛び抜けたクズ。山へハイヒールで来て「シャワーないの?」とのたまう勘違いギャルで、最後までクズっぷりを遺憾なく発揮。観客のヘイトを一身に背負ってくれた。絶対、こいつ川があったらウェイウェイ言いながらBBQして、ゴミ捨てずにインスタにあっぷだけしてさっさと帰るタイプ(※偏見です)。

メガネ男子のウィルも負けてない。こいつ、ピンチになったら、もうひとりの女の子ミシェルに

「君をオトリにしよう!」

と平然と提案するサイコパス野郎。一応、そのあと申し訳程度に「俺が必ず守るから!」と付け加えるも、メガネ男子に出来るわけもなく、あえなくミシェルは襲われるハメに。

このようにウィルもクソだったが、近眼だから凶暴化(ゾンビ化)しても近眼、ってのは、結構新しいなーと変なところに感心する俺もいた。

ま、そんな感じで、パッケージに「全世界絶叫!」って書いてあるわりに「絶叫してるのはお前らだけやろ!」って指摘したくなる点を除けば、気軽に鑑賞できる良質ホラー作品でした。

(それと、最後は、みんなで一緒に凶暴化したほうが良いんじゃないかなぁ……)
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