KSat

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのKSatのレビュー・感想・評価

3.7
「家族ゲーム」、「テオレマ」、「ファニーゲーム」、「淵に立つ」のような、とある外部からやってきた存在によって家庭が崩壊する様を描いた映画は数あるが、本作はとりわけ画や音響の主張が前面に出ているといえよう。

全体的なカット割はもちろん、ゆっくりと人物に向かうズームや広角レンズによる室内描写、歩行する人物と一定の距離を維持しながらのドリー、発作的な不協和音、エンドクレジットの出し方など、最初から最後までフェティッシュなまでにキューブリックの模倣が続く。この監督に限らずキューブリックに影響された監督は数多くいるが、ここまで極端なのはなかなかいない。もはやギャグの域だ。

特に、薄暗いベッドルームで髪を束ねたキッドマンが下着姿になる様は、「アイズ ワイド シャット」まんますぎる。あまりに露骨すぎて、もうそれ自体が「家庭(夫婦)の崩壊」を描いた映画だという示唆になっているようだ。

ひげだるまなコリン・ファレルの姿はある意味で「ショッキング」だが、バリー・コーガンの気持ち悪さは本当に凄い。マジで俳優なの、俳優なんかやっちゃって大丈夫なの、というくらい、発達障害か精神異常者にしか見えない。

残念ながらギリシャ悲劇について全く知らないため、タイトルの意味するところは分からなかったし、後半の監禁してからはちょっと退屈に思えた。とりあえず、娘役の見た目は監督の好みなのだろうか。前作「ロブスター」のアリアン・ラベドやアンゲリキ・パプリアと似た系統の顔立ちだと思う。
KSat

KSat