こぅ

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのこぅのレビュー・感想・評価

4.5
第70回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞、ヨルゴス・
ランティモス監督の【スリラー】。

妻と子供2人と裕福に暮らす心臓外科医スティーブン(コリン・ファレル)だが、彼が親しくしている少年マーティン(バリー・コーガン)を家に招き入れてから生活は一変する…。

恐るべしヨルゴス監督!

恐るべしスタンリー監督!

冒頭の手術中の心臓アップから衝撃が。
手術を終えたスティーブンと他の医師が廊下を話しながら歩いてくるが、そのカメラはかなり離れた手前から擦れ違うように捉えている。逆に離れた後方から後をつけるように捉えたり。

医師に接近する少年、息子なのか⁈スティーブンの態度はよそよそしい。序盤から不穏なムードが充満している。やがて2人の関係性は判明する。

この少年マーティンを演じたバリーの不気味さは格別だ。中盤、スティーブンに衝撃的な発言(提示)や終盤、危機的状況になっても無表情のままいつでも冷静沈着、動じないのが【一番怖い人間】だろう。
対するコリンの沸々する気持ちを抑えた、のちに爆発する演技もベテランならではで見事。妻役ニコールも好演。マーティンのママ役アリシアは久々に見たけど、少し老けたくらいで昔の面影はまだ残っていた。(あ、キャットファイトにも出ていたっけ。)
いっそのことマーティンのママと医師が寝れば面白かった。

前述したカメラワークは少年マーティンがスティーブンを、家族を、まるで【ストーカー】で張り付いて気付かれないように見ているかのような気持ち悪い印象だった。

ヨルゴス監督は観る者の神経を逆なでる事を熟知しているかのよう。
それはバリーのキャスティング、演技の演出だけに留まらない。
家族に起こる最初の悲劇、院内での一度フェイント掛けてからの、上方から捉えた俯瞰ショットは個人的にかなり【ショッキング】だった。これは考え抜かれて効果的。
また、音楽ならぬストリングで奏でる不快音やステディカム撮影(ブレない撮影が可能)には明らかにスタンリー監督【シャイニング】の影響が伺える。←スタンリー監督はステディカム撮影をダニー少年がホテル内を縦横無尽に走る三輪車を追うシーンやラストの迷路に使用していたはず。

脚本ではマーティンの武器として◯◯を用いて人間の【膿】を出したのが秀逸。

クライマックスのマーティンの衝撃的決断よりも、ラストのダイナーでのスローモーション無言やり取りのが怖い。その【得体の知れない恐怖】のまま幕を閉じる。


本作といい、【RAW】といい、【レディ・プレ】といい、【シャイニング 続編】制作といい、40年近く経った今でもスタンリーいや、シャイニングの呪いはまだまだ解けない。
こぅ

こぅ