未島夏

ナラタージュの未島夏のレビュー・感想・評価

ナラタージュ(2017年製作の映画)
4.0
人はどうしようもない欲動に理屈や善悪を超えて突き動かされる。
その決して払拭出来ない欲動を泉と葉山の業が全て露呈する関係へ透過し、観る者各々が持つ無数の欲動の記憶を呼び覚ます。

是枝裕和監督「三度目の殺人」、黒沢清監督「散歩する侵略者」と著名な監督のシネマスコープを強く意識した作品がこの頃次々と発表されている中、この「ナラタージュ」がシネマスコープかつフィルムの質感を重視したルックであればどうだったかを考える。

無論実際のルックも素晴らしく、人物の精神と肉体両面に降り頻る冷たい雨を街灯、テールランプの光が柔らかに照らす事で生まれる心細さが、泉の心理と感覚を静観に捉える。
そしてややぼやけた濃度の高い黒。
画面設計とト書きの繊細な同期による精密さが、理屈を超えていく欲動の描写を可能にする。

人が人を求める原動力を繕わず、装飾せずに映し出すその光景に、最後まで見入った。
未島夏

未島夏