茶一郎

マンハントの茶一郎のレビュー・感想・評価

マンハント(2018年製作の映画)
3.0
 『マンハント』!「偏差値30からの一発逆転 男魂養成スクール」ジョン・ウー学校が休校から戻ってきた!と、思ったら、8年前のカリキュラムを無理矢理、今に置き換えただけの、何だか違和感の塊みたいな作品に感じてしまいました。
 まさしく「男の必修映画」と言うべき『男たちの挽歌Ⅱ』を始め、ハリウッド進出で大成功を収めた『フェイス/オフ』など、最高のバイオレンス・アクション映画を数々生み出してきた校長ジョン・ウーが、自身の原点だと語る日本映画へとオマージュを捧げた『マンハント』。本作は、今は亡き高倉健さん主演の『君よ憤怒の河を渡れ』のリメイク作品になります。

 しかし原作やリメイク元を見ていないよ、と言う方もご安心を。本作『マンハント』では、冒頭、登場人物が『君よ憤怒の河を渡れ』の台詞をそのまま言ったり、「昔の映画は長いよね」とリメイク元の上映時間(151分)の長さをディスったりと、映画が始まって早々に本作の劇中世界が『君よ憤怒の河を渡れ』が存在する世界であることが提示され、その後の展開は男と男とがスローモーションと鳩を背景に行う全く別のジョン・ウー節のアクション映画になります。
 ジョン・ウー監督自身も本作を「ヒッチコック風のサスペンスを前面に押し出した」と語っている通り、物語の軸は、製薬会社の顧問弁護士ドゥ・チウ(チャン・ハンユー)が殺人事件の濡れ衣を着せられ生じる「巻き込まれ型」のサスペンスです。そしてドゥ・チウを追う矢村警部(福山雅治)が、彼との追走劇の過程で不思議な友情を形成していくという展開。
 アウトローと刑事との友情と、言うとジョン・ウー作品の中でも『男たちの挽歌』から、特に『狼/男たちの挽歌・最終章』で押し出されるテーマですが、残念な事に本作の友情物語は『狼/男たちの挽歌・最終章』の10分の1の出来と言った所で、非常にもたつきテンポも悪いものでした。 アクションシーン一つ一つが物語と男と男の友情を進行させて語っていた『狼/男たちの挽歌・最終章』と比較すると、本作『マンハント』のアクションシーンでの物語の停滞っぷりは酷いものです。

 日本語吹き替えのリップシンクの合わなさや、話のブツ切りが非常にノイズになっている以上に、やはりジョン・ウー監督のセルフ・オマージュ、セリフ・コメディ感が全編に強烈なノイズを作っています。決して悪い映画ではないのですが、ジョン・ウー作品となると話は別です。本作を一回見るくらいなら、『狼/男たちの挽歌・最終章』を10回でも見た方が良いのではないかと思ってしまうほどです。
茶一郎

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