ファルコンヘビー

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~のファルコンヘビーのレビュー・感想・評価

4.0
“無音”がいかに人の心に
“音”として響くのかを教えてくれる映画


この作品はメタルドラマーである主人公(ルーベン)が、先天的ではなく、後天的に突如、“音”を失い、重度の難聴患者となり、

“爆音の日常から、無音の人生”

つまり、
”これからの自分”と、
”今まで歩んできた自分”
どちらを選択するかの葛藤を見事に描いた作品


今まで、いろいろなことを経験し、いろいろなことにチャレンジしてきた中で
唯一、音楽というジャンルだけはなぜか経験していない自分にとって、

“〜〜メタル”

という題名をみた瞬間、無意識に
“これはちがうな”
と思ってしまい見ないなぁと思ってたのですが、
“アカデミー作品賞ノミネート”
というのを聞いて、百聞は一見にしかずと思い、チョイスしてみました
(なんなら、AIが教えてくれる
“似ている作品”
の中に、めちゃくちゃ好きな
『失明に関する所感』
があったのもある)


意外にも、
ストーリーが始まると、
“メタル”
の部分は冒頭5分くらいで終わり、
どちらかと言うと好きな
音もなく陰鬱な淡々とした展開がひたすらに流れる。
こういう作品のいいところは
“言葉”の重要性がすごく心に響くこと

がしかし、
この映画のもっっとすごいところは
“言葉”の重要性を描きつつも、
“音”と“無音”
による2つのシーンで、
異なる2つの世界観を見事に描きつつ、

後半は、
あえて“言葉”にたよらず、語らず、
観ている者に伝える
“空気”
だけで感じさせてくれる演出は圧巻の一言


もう一つ、
ある意味で
『再出発』になる再会を果たすシーンでは、
自分が思い描いていた
“理想”と“現実”
との差を噛みしめながら、
2きりのベットシーンで、全てを悟った長い沈黙からの抱き合うシーンは、いつのまにか主人公ルーベンと、昔の自分が重なり
一緒に号泣してました


素晴らしいシーンがたくさんありましたが、
物語の最後の
約1分20秒の無音の中での帽子を取ったシーンは、
この物語の伝えたかった事の
“覚悟”と“希望”
そして、
“新たな世界への一歩”
が、見事に描かれていたような気がします

やはり人は、
絶望を経験し、
新たな1歩を踏み出し、
成長するんだなぁと改めて感じれました


そして
このシーンのルーベンを見ていると、
可能性に満ち溢れたあたたかい気持ちにさせてくれます。



この映画は
“知らない世界を知れる映画”
そして
”今年のアカデミーは
『ノマランド』か『これ!』

傑作です!!