ファルコンヘビー

ノマドランドのファルコンヘビーのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.9
『ノマド』という生き方を
“悲観的”に捉えるか、
“新たな希望”と捉えるかで、
まったく印象が変わる映画



この作品は、
『ノマド』を生き抜く女性の姿を、
大自然の美しい景色と
広大に広がる険しい山々
を通し、その女性の
“自立”、”誇り”、“たくましさ”、“可能性”、
などたくさんの意味を表現し、
確信を定義せず、
観るものの感性に委ねる映画なのかなと


実は最初にこの作品を見た時は(2回鑑賞)
『ノマド』というアメリカ文化
という現実だけをなんなら1歩引いたところから観てしまい、昔のマイノリティーを主張していた
「シェイプオブウォーター」
のような“アメリカ映画”という見方をしてしまい、正直あまり響かなかった
「60歳の時に見たかったなぁ」
ぐらいなもんで、またまたアカデミーの信頼ガタ落ちでした。

がしかし、
2回目の時は、ちょっと違う見方をしようと思い、
ふと自分自身がいる
「この日本でも起こりうる現実」
(というかノマドではないが、すでに起こっている現実)
と考えだすと、急に興味が湧き、心を揺さぶりだした


見どころはというと、

なんとこの作品で出会う人々すべてが実在の『ノマド』ということに
驚きと喝采しかない
彼らの
「言葉」、「生活」、「思想」
すべてが本物であり、リアルだということに胸が締め付けられつつも、
自由という無限の可能性に満ち溢れている


そしてもう一つ、
やはり結びつくのは、今回のコロナにより、人々が長い歴史をかけて積み上げてきた、現実社会のモロさが如実に浮き彫りになったこと

多くの人々は
“幸せな時間”
を得る為に、
より時間を有意義に確保する為に、
より便利な物に執着し、
より効率を求め続けてきた。


サラリーマンは毎日朝早く会社に通勤し、
仕事を終わらせる為に毎日残業し、
時にはプライベートよりも優先し、
会社の為に汗水たらし働いてきた。
しかし、
鉄壁と思われた巨大なこの社会経済は
あるたった一つの
“天災”
の気まぐれにより、まるでドミノ倒しのように、一気に崩壊の一途を辿る
そして、磐石と思われた
『自己を取り払った会社と労働力』
との関係は、いとも容易く切り捨てられる。
そしてそこに残るのは社会との繋がりなんて何一つない現実だけ。


かたや『ノマド』の人々は
出会う人すべてに
声を掛け合い、
知恵を共有し、
物と物を交換し合い、
お互いにちょうどいい自然体の距離感で助け合っている。
『ノマド』を貫き一生を終える人もいれば、それを送り出す人もいる。
そして『ノマド』を捨て、家のある生活に戻る者もいる

そこには
過度のストレスなどなく、
全員が
“自由”
という、一番の幸せを手に入れ、
愛で繋がっている。


いつの間にか人々は本質を見失い、
手段が目的に変わっていることに盲目になり、
ほんとうに大切な

“愛とは与えるもの、与えられるもの”
ではなく
“そこにあるもの”
ということを忘れてしまった気がする



先日面白い記事を友達から聞いたのですが、毎年スイスのダボスにて、世界中の知識人や、ジャーナリスト、経営者、などのトップリーダーが2500人集まり、
世界が直面する重大な問題について議論する ”ダボス会議” というのがあるらしく、
今年のテーマはというと、
「グレート・リセット」
コロナがもたらした現代社会への深刻な打撃、さらに浮き彫りになった格差の拡大など、あらゆる問題に対して、全てリセットし、全く新しい方法を定義し、議論しようという会議だったみたいです

この映画もテーマは一緒のような気がしていて、ある意味で新たな可能性を見つめなおす映画なような気がします。


この映画は
全ての価値観が変わると言われている現代にとって
“すごく大切な映画”
だと思います!!
“今見るべき映画”