Melko

ガラスの城の約束のMelkoのレビュー・感想・評価

ガラスの城の約束(2017年製作の映画)
3.8
「一生プールの縁にしがみつくつもりか?沈みたくなけりゃ、泳ぎ方を覚えろ。」

「あのバカと結婚するな。お前の方が上だ」

「お前は俺とは違う。何も恐れない」
「私はパパ似よ。良かったわ」

切ない話だったなぁ…
気になって📎、あらすじを読んで体力使いそうな内容と思い一度スルー、見放題終わり諦め、また見放題に来たら📎し直し…を繰り返すこと数度。
ようやく見れた。

内容に関して賛否両論なのは、すごく分かる。
大衆と違う生き方を選択し全うするのは個人の自由だとは思う。ただ、それに否応なく付き合わされることになる子供が一緒となると話は別。
行政なんか信じられるか!なアウトローな生活で、大火傷をしても病院でマトモに手当も受けさせてもらえず、学校で教育も受けられず、引越ししすぎて近所で友達も作れず、おまけにその日の食事すら事欠く始末。それも何日も。
火傷はネグレクトが原因、子供が子供の面倒を見るヤングケアラー状態、常に空腹

父親は定職につかず、喧嘩っ早いし、酒を飲んでばかり。子供の教育はスパルタ、嫁子供、自分より弱いものに対して偉そうな態度。
母親も働かず、金にもならない絵を描いてばかり。電気もガスもないのにどう生活するのか憤る子供に対して「奇跡が起こってガスが湧き出すかも〜」なんていう頭お花畑。

そんな両親のもとに生まれ、アメリカ各地を引っ張り回された4人の子供たち。家を出ることを目標にお金を貯め始め、両親の目を盗んで逃げるように家を出ていく。

序盤15分ぐらいして、両親の毒親ぶりに辟易して一度止めたものの、再開してからは一気に見た。

ラスト主人公である次女の「私は本当に恵まれてる」の一言で片付けるには、子供達の生活はあまりにも過酷。ただ、子供たち特に1番反発した次女が最終的にあの父親を赦したのは、父親がどんな時も「子供たちのことを心から信じていた」からかなと。それは、子供たちが持つ能力や気質、可能性。

父親も母親も「お前には才能がない」「バカ」と親から言われて育った
鬱屈した反発心から自由な生き方を選んだわけだけど、その否定的な言葉を、自分の子供には言わなかった。
「やればできる」「勇気を出せ」「お前は賢い」
生活は悲惨だったけど、子供達は親からポジティブな言葉をかけて育ててもらった。
だから、本来なら過ごせるはずだった、温かくて満ち足りた子供時代を親の都合で奪われた積年の恨みや憎しみを捨て去れた時、残った昔の楽しかった思い出であの言葉が出たのかなと。父親は心の底から、次女が自分の力で幸せになることを望んでいた。誰かに幸せにしてもらうのではなく。
もう一つ、そんな父親のことを恥ずかしい一心で隠すのではなく、「酒浸りで性格破綻」と認め受け入れた上で「大きな夢を持ち賢かった」と、1人の人間としてのいい面を思い出せたのも、次女が人生の次のステージに進めたポイント。親の死に目に「会えなかった」のと「会わなかった」は違うもんね。
あと、親からの暴力、虐待、性虐待がなかったのも大きいと思う。それをする最低の親もいるから。

総じて、子供達頑張った
子役たちも頑張った!

憎まれ役の父親、ウディ・ハレルソンはよく似てたしよく演じてた

淡々としたキャリアウーマン、突然目を吊り上げて怒声を上げながら婚約者の腕相撲を応援する姿、親との関係性で苦悩する姿、父親との対峙、涙、ラストの涙と、さまざまに見せた表情の主演ブリー・ラーソン、名演だったように思う
それまでずっと暗かった顔が、ラストようやく心から笑えていたのが印象的

親と子の関係性を考えた作品だった
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