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ガラスの城の約束のろのレビュー・感想・評価

ガラスの城の約束(2017年製作の映画)
5.0

娘の私を“チビヤギ”と呼ぶパパは、働いていなかった。
空き家を転々とする生活は、家族を空腹にした。
次第にアルコールに依存するようになったパパは、暴力を振るうこともあった。

だけど、パパは私の願いに応えようと、ベッドに手足を縛り付けてアルコールの誘惑と必死に闘っていた。
そんなパパには大きな夢があった。
いつかガラスの城を建てて、家族みんなで住むという夢が・・・


ジャネットの母親は絵描きだった。
いつか自分の才能が開花するはず。次に住むこの場所ならきっと、名画が生まれるに違いない。
そういう理想(希望)を抱いて前に進もうとする。
父親もそうだ。
ガラスの城のアイディアを家族で出し合い、手帳には詳細な図面。理想はどんどん膨らんでいく。
ここにはソーラーパネルを置こう、ジャネットの部屋にはガラスの階段だ。
しかし、建設のために頑張って掘った穴はどんどんゴミで埋まっていく。
高すぎる理想が前に進むことを阻んだのだ。


教育を受けさせてくれなかった両親のもとを離れ、彼らを忘れるように(見返すように)ニューヨークで働くジャネット。
雑誌コラムを執筆し、ブランドの服を身にまとい高級レストランで食事をする毎日。
そんな彼女に、再会した父親はこう問いかける。
「婚約者と生活をしているというのに、まだ荷を解いていないんだな。」
「お前が今やっていることは、本当にやりたい仕事なのか?」

婚約パーティーに両親が現れたことで、怒りが爆発するジャネット。
「お父さんのことずっと信じてきたのに、お父さんはいつも家族を裏切ったじゃない。」
けれど、両親のことを偽り、本当にやりたいことから目を背け、周囲にも自分にも嘘をついていたのはジャネット自身だった。


火傷の痕を「これはお前が強いという証なんだ」と言ってくれたのはパパだった。
パパは娘が手掛けた新聞記事をすべて大事に取っておいてくれた。

「俺は自分自身を恐れていたんだ。」
父親が自分と向き合えたとき、娘もまた父親の中にいる自分を見つめていた。
ろ