リッキー

レッド・スパローのリッキーのネタバレレビュー・内容・結末

レッド・スパロー(2017年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

842本目。
スパイ映画といえば「007」,「ミッション・イン~」など、派手なアクションシーンのイメージがありますが,こちらは時代背景や国家状況などを考慮した情報・心理戦が描かれた作品であります。

主人公ドミニカは,演技中の事故によりバレリーナ生命を絶たれたため,病気の母の介護人の契約を打ち切られ,住む家からは退去せねばならなくなり,未来が見えなくなってしまいました。そんな彼女をロシアの高官である叔父は巧妙に口車に乗せ,スパイの道に引き入れてしまいます。

ロシア側の内通者探しがドミニカに与えられたミッションです。その内通者を知る唯一の手がかりであるCIA諜報員とドミニカとは,互いに手の内を明かし,諜報をしかけません。それは各々の利益のためであり,決して安っぽい恋愛感情によるものではありません。

スパイ映画では数々の裏切りがあり,それによって敵と味方とが二転三転することも定番になっていますが,この作品にはそのような逆転劇もありません。常に見張られ,時に裏切りの疑いをかけられ,拷問を受けても,ドミニカの目的は終始一貫しています。それは「自由」になること。作品中,ドミニカが「この身体は国家のもの」と主張するシーンが度々あったのが気になっていましたが,CIA諜報員との関係も,叔父を陥れることも,ロシアに戻っての出世も,国家の束縛から逃れるためと考えれば腑に落ちます。

このようにスパイ映画なのに自分の利益のために動いているところが画期的だと思いました。現代の諜報員の感性は冷戦時代よりも緩いのかもしれません。

ジェニファー・ローレンスの演技については完璧です。養成所を経て次第に妖艶さを増してくる演技は脱帽です。脇の俳優の好演により映画のランクが数段上がっているように感じられました。久しぶりに重厚なスパイ映画を鑑賞しました。面白かったです。

ただ残念なことは,冒頭で彼女はプリマドンナを演じていましたが,バレリーナのスタイルには見えず,ロシアのバレリーナの水準を甘くみているような感じがしました。挫折を描きたいならバレリーナでなくてもよかったのではないでしょうか。そこが減点ポイントです。
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