イチロヲ

性的犯罪のイチロヲのレビュー・感想・評価

性的犯罪(1983年製作の映画)
3.5
経営難に喘いでいる零細企業の若社長(河原さぶ)が、自分の妻(風祭ゆき)と不倫相手(三東ルシア)を利用しながら、突拍子もない金策を企てる。福岡県で実際に起こった事件をベースにしている、日活ロマンポルノ。

登場人物が置かれている会社環境が、著者が実体験としてもっている倒産直前の修羅場とよく似ている。前半部で見せられる切羽詰まった状況を、従業員側として実際に経験しているため、リアル社会に忠実な映像化であることが理解できる。

中盤部、3人が一緒に夜逃げしてからの展開にワクワクさせられるが、遠方へと逃避するわけではない。映画的な面白さを付加価値とするならば、喧嘩しながら遠方へと逃避行する展開のほうが良かったかも知れない。

とはいえ、人間の陰湿な部分を軽妙なタッチで描いているところが好印象。遺体を目前にした妻と愛人が、完全犯罪のためにヒト芝居を打つ展開が最高に笑える。ふたりの女との肉体関係を、仇で返される。羨ましいけれど、羨ましくない、そんな物語。
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