例えるなら、パシフィック・リムの人間側が負けた世界線のような物語。これは敗北から始まる人類の復讐の物語である。
ゴジラというよりはSF映画の様相が強く、ストーリーもほとんど序章であり、この映画単体だけではお世辞にも出来がいいとは言えない。しかし仕込んだ種は往年のゴジラファン歓喜の伏線であり、二作目への種まきとしては最高である。
ただ致命的な点もあり、肝心の人間サイドの掘り下げが甘く、お世辞にも感情移入できるタイプの主人公ではなかった。なぜ主人公がそこまで地球やゴジラにこだわるのかがこの映画単体だといまいち伝わって来ず、組織行動にあそこまで向いてない人間に付き合わされる他の人間も気の毒である。地球を捨てた流れもやや強引であり、わざわざ宇宙に出た必要性も感じられない。また、20000年後の地球の原生林という比較対象のない環境ということもあって、ゴジラの巨大さが伝わりにくいのも難点である。正直な話、この映画本編より、その前日譚のほうが映像で見たかった気がする。少なくとも予習として小説は読んでおいたほうがいいかもしれない。
それでもまだこの一作だけでは評価できない点もあるので、次作へ保留。次作も確実に見ると誓える人間にのみ勧められる作品であり、単体だとちょっと無理。だが仕込んだ伏線は魅力的である。余談ですが、櫻井ボイスの不穏感と信用のできなさは一級品だと思う。
