ウシュアイア

君の名前で僕を呼んでのウシュアイアのネタバレレビュー・内容・結末

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

北イタリアのリア充イケメン男子高校生エリオとアメリカからやってきた大学院生オリヴァーとのひと夏の恋を美しい田園風景とともに描いた作品。

レビューの中で、一人の人間としての人間愛から性愛に発展していった、といった解釈が散見されるが、少なくともオリヴァーはエリオに対して性愛の感情を抱いていたと解釈が正しいように思える。作中で出会った初期からオリヴァーはエリオに対してお触りなどをして粉をかけていると思われるシーンがあり、後にそうやって「サインを送った」とも告白もしている。

もし、エリオが女の子だったら、恩師の娘という立場上、手を出した責任をとる覚悟が求められるものの、親しくなったタイミングで手をつないだり、もしくはいきなりキスをするなり、言葉で愛を語るなりして、気持ちを伝えればよい。エリオも好きなら受け入れ、時期尚早もしくは嫌なら拒めばいい。夏が終わってオリヴァーがアメリカに帰ってしまえば、関係を続けるのが難しくなるし、帰国が近づけば当然苦しくもなる。無理してエリオとの遠距離を続けずに、社会的な信用を得るための手ごろな女性と結婚してしまうということだってあるだろう。そして、運命のいたずらで再会すればドロドロの不倫に陥る展開だってあるだろう。

ここで描かれる恋愛の苦しみについても男同士ならではの事情はそれほどない。(自分が鈍いだけ?)こういう思考実験をしてみると、男女間と男同士ではアプローチが少し違うだけで、本作はいたってごく平凡なラブロマンスであることがわかる。

エリオとオリヴァーの周囲が2人の関係に寛容だったから、LGBTQに寛容だといいね、うらやましい、もしくは、寛容であるべきだ、という感想を持つ人もおり、別に構わないと思うが、発信側にそういう意図があるようには思えない。

この作品にLGBTQの概念を持ち出さない方がいい。二人の関係性が割と普遍的であることをかえって見えにくくしてしまう気がする。
ウシュアイア

ウシュアイア