よしや

君の名前で僕を呼んでのよしやのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.0
こんなに美しいゲイがテーマの恋愛映画みたことある?並みの恋愛映画の数倍綺麗な映画。

恋の甘くて純粋な輝きとキラキラした感情がイタリアの夏を舞台に非常に鮮明に美しく描かれている。
もはや美術映画と言って良いほど鮮やかな自然と深い情念が丹念に写されており、グァダニーノ監督と美術チームの画面作りへの高いクオリティがうかがえる。

男の同士の同性恋愛につきものである重さ、いやらしさは完全にコントールされていて、その恋愛の純粋さだけが抽出されたような輝きがある。
でも異性ではなくこれが男同士の恋でなければなかったであろう感情の細やかな、細やかすぎるような駆け引きも丁寧に敷かれている。

call me by your name、君の名前で僕を呼んでというタイトル通り、相手を愛することが自己肯定に繋がるという恋愛の素晴らしさ、そして1度しかない人生を後悔なく気持ちに正直に生きるというメッセージが押し付けがましくないよう優しく提示されるのが良い。

エリオを演じた主演のティモシー・シャラメの演技は繊細で感受性豊かなのが素晴らしい。
少年性溢れる場面とどこか大人びて落ち着いた場面の演じ分けが非常に上手い。
最初のオリヴァーと出会いのシーンではまだ少し落ち着いた子供のように見えるエリオがガールフレンドやオリヴァーとの恋を経て自身の感情に向き合いながら大人になって行く。ある意味エリオの成長物語ととってもいい。

オリヴァーと別れ電話で迎えを頼む時の感情の抑えきれないシーンと電話でオリヴァーと再会する時の一気に大人びた感じが特に良い。ティモシー・シャラメのアドリブ、演技ともに憧れる。

関係ないけどエリオが女の子とも恋して初めてセックスして、でもオリヴァーに惹かれてしまい、女の子はどうしようもない感情でたたずんでいるのが描かれているのが個人的に良い。

オリヴァーを演じたアーミー・ハマーも恵まれた体格と男前なフェイスははまり役で普段は悠々と余裕のあるモテ男だがエリオとの恋愛シーンでグッと優しくなるその差が愛おしい。

タイムリミットのある恋、それも男同士というやや設定を盛り込みすぎかと感じられる点も全く不満はない。
主人公2人や周りの大人たちはみな教養と懐が深く、自然豊かな避暑地でのバカンスは時間の流れを落ち着かせ、感情を開放的にさせ、実に自然かつ無理のない範囲で話は展開する。

エリオの両親がゲイに理解がありすぎるようにも思えたが、最終シーンでのオリヴァーからのうちの両親はそうではない、と語るシーンやエリオの父親の過去の経験の語りときっちりフォローアップがなされていることも印象が良い。
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