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オアシス:スーパーソニックのKKMXのレビュー・感想・評価

3.6
 オアシスのデビューから絶頂期までを捉えたドキュメンタリー。そこまで好きなバンドではないが、ゴシップ的な興味があり鑑賞。まおも。思ったほど下世話でなかったし、個人的な思い入れがないため、ハマるには至りませんでした。


 仲の悪いギャラガー兄弟。本作を観ると、そのルーツは母親の愛情を獲得するための競争のように見えました。シングルマザーで肝っ玉母さんの元で、子どもの頃のナイーブな兄ノエルとガサツな弟リアムは大好きな母ちゃんを取り合っていたように感じます。それがそのまま大人になって確執だけが残った、みたいな印象を受けました。本質的な仲の悪さは感じなかったです。
 あと、リアムはマジでごろつきなので、絡み方が酷く、兄貴がキレるのも仕方がない。現在も10年くらい断絶してるんですよね確か。しょうがないですね〜。

 細かいエピソードは割と面白かったです。リアムはもともと音楽に興味がなかったが、ヤンキー同士の抗争で頭をトンカチで殴られたら音楽が好きになったという話はあまりにもアホで最高!あと、もともと活動していたリアムのバンドにノエルが加入してオアシスができたのですが、昔の噂では「お前らをスターにするから俺がすべてバンドを仕切る」と宣言して加入した…みたいな話でしたが、実際はリアムたちに泣きを入れて加入したのが真相とのことで、これまたウケた。
 ノエルは基本的にインタビューの時に挑発したり話をデカくしたりしているようで、そうやって盛り上げているのだとか。賢い男だ。ノエルには優れたプロレスラー的センスを感じました。
 兄弟の父親のクズ振りも印象深い。ノエルを虐待していただけでなく、バンドが売れてから自分を被害者ポジションに置いて週刊誌にゴシップを売るとか最低最悪だと思いました。


 1番共感した話は、初代ドラマーをクビにするところ。バンドがデカくなるにつれ、ドラマーのスキル不足が顕著になる。ノエルはそれがストレスで、ツアーでもドラマーをいじめていたようです。
 やってたことは酷いですが、ノエルの気持ちがめちゃくちゃわかりますね!バンドやっていると、スキルがないけどこれまでの付き合いで情はあるからなかなかメンバーチェンジに踏み切れないことはままあります。それってめちゃストレスなんですよ!リーダーポジションにいるメンバーにとっては、「マジでふざけんなよヘタクソ!」と練習とかライブのたびにストレス掛かるし、一方でメンバーによっては「ヘタでもいいじゃん」みたいなスタンスの連中もいたりするから意見の一致もなくて、リーダーにとってはマジで苦痛なんですよね!
 で、オアシスなんてトップバンドだし、さらにクリエイティブになるにはドラマーのすげ替えは不可避。しかし、苦労をともにした仲間のクビを切るのはなかなかハードだと思います。ノエルはずっと葛藤があったと思いますよ。だから、いじめみたいな陰湿な形になってしまったのでは、と思います。

 個人的には、オアシスの1stってまったくハマらず、名盤と名高い2ndは割とバッチリ好きでした。メロとかは1stもすごくいいのに、なぜ好きになれないのかナゾで、数年前に2枚を聴き比べたところ、原因はドラムでしたね!初代ドラマーの音は固くて躍動感に欠けるんですよね。こいつ細かいビートを感じられないのです!ダメすぎ!ノエルがキレるのも痛いほどわかります。
 一方2代目はしなやかでロールしてる。ちゃんと16ビートを感じながら叩けているので心地よさが違います。『ワンダーウォール』のドラムのフィルインなんて、そこだけリピートして聴きたいくらい気持ちいい。なので、『リブ・フォーエバー』とかも2代目が叩いていたら多分めちゃくちゃ愛聴してたでしょうね。
 ノエルよよくぞ決断してくれた、と拍手喝采でした!できれば1stの前に決断してくれていたらもっと良かったのですが。
 というわけで、個人的なハイライトはドラム交代劇でした。3枚目以降は失速したので、個人的にオアシスといえば2ndになりますねぇ。後年にも『ライラ』とかいい曲ありますけどね。

 オアシスは『ドント・ルック・バック・イン・アンガー』をドロップしただけでも偉大だと思います。マンチェスター・テロのときにこの曲が合唱されたのは感動を禁じ得なかった。本作でのライブバージョンも胸に迫った。歌詞もいい。本当の名曲だと思います。
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