カルダモン

アンダー・ザ・シルバーレイクのカルダモンのレビュー・感想・評価

4.5
シルバーレイクに住む正体不明な人たち。どんな仕事をしているのか、どんな暮らしぶりなのか。彼らの暮らす街で一体何が起こっているのか。冒頭から現実とも虚構ともつかない世界へ誘われた。

常時不安げでロクに仕事もせず、ゲームや音楽などポップカルチャーに耽るサム(アンドリュー・ガーフィールド)は、街や人に翻弄され、呑まれながらも、底知れないセレブのみが興じる世界を垣間みようとする。
隣人のサラが知り合った翌日に失踪、部屋の壁に残された記号を糸口にレコードの逆再生、シリアルのオマケの地図と、ゼルダの伝説の地図を辿る。

次第に物語の輪郭がうっすらと浮かび上がるものの、ひどく曖昧模糊で捉えどころがない。しかし見えない境界線は確実に画面から伝わっており、それが心底不穏で強烈な違和感を覚える。

今は理解できないディテールやモチーフの数々を脳内に並べながら、わからない状態をひとまず楽しんでいる段階。
犬。鳥。本作で象徴的に扱われている動物が示すものはいったいなんなのか。
スカンクの攻撃をあの距離で食らったら恐らく死ぬだろうが、臭いが取れないまましばらくの間「なんか臭くない?」と言われ続けるサムの描写って拒絶の比喩なんだろうか。
劇中のサム同様、まるで強迫観念症のように見るもの全てが疑わしく、すべてに裏の意味が含まれているように見え始める。前作同様に一見普通の風景をジーーーっと捉えるカメラによって、我々は変哲のない風景に意味を読み取ろうとする。

わからない。物語が深く潜れば潜るほど何も見えない。その状態を楽しめる人ならば大いにオススメしたい作品であることは間違いないが、逆に明快な展開と結末を求める人にとっては苦痛かも知れない。

デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督、やはりかなりの曲者。『イットフォローズ』に続きまたも怪作を生んでしまった。
ロケーションと音楽は前作の方が好みだったが、相変わらず「水」の描写は魅力的。

もう一度味わいたい。
シルバーレイクの街をもっと探検したい。