きゅうでん

アンダー・ザ・シルバーレイクのきゅうでんのレビュー・感想・評価

-
この映画、めちゃくちゃずるい。

この映画はハッキリ言って物語が破綻している。
しかし、謎解き映画で謎解きの無意味さを表明しているので、ストーリーラインに関する”真っ当な批判”を全てかわしている。
抽象性がすごく高いか具体性がすごく高い部分だけを論じるべきであって、その中間の”謎”を”考察”するなんてことには全く意味がない。本作で語られるのは、そういう「作品鑑賞論」なのだと思う。

「誤字を私的することなんて全く意味のないことですよ!」という文章に対して「”私的”じゃなくて”指摘”ですよ!」とは言えない、みたいな。そういうずるさがある。
なお、本レビューにおける”ずるい”という表現は、すべて褒め言葉です。

(そういえば『天気の子』は、大人世代による子供世代への環境問題を主とした諸々の問題の押し付けを批判することで、大人世代の観客が主人公の”東京よりヒロインを選ぶ”という決断を断罪することそれ自体への批判を内包した作品になっていた。だからあの作品に「東京を沈めるオチは無いだろ!」とは言えないようになっている。ずるい。)

『インヒアレントバイス』、『ロンググッドバイ』や、デヴィッドリンチ作品などとの類似性を指摘されている方が多くおられますが、私も同意見です。
要するに、シーンごとの”演出”を好む(または嫌う)のが、この映画の見方として最適だと思います。