きゅうでん

羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来のきゅうでんのレビュー・感想・評価

4.5
冒頭で黒猫シャオヘイが森をかけていくアクション作画だけで、もうやられた。
文句なしに今年の劇場アニメナンバーワン。

「エコロジスト過激派vs.穏健派」という様相の80-90s宮崎駿的テーマを、現代的ジャパニメーションの文脈(特に少年漫画原作系のアニメに代表されるマンガ的デフォルメ演出およびキャラ造形)でエンタメ舗装していて大変に素晴らしい。
(静止画だけみるとカートゥーンアニメの影響が強そうに見えるが、本編をみるとアクションやギャグ演出など明らかに日本のアニメの文脈上にある。絵柄がカートゥーンっぽく見えたのは元がFlashアニメであることが影響していそうだ。)

いまこのテーマを日本で、というか中国以外の先進国で堂々とエンタメアニメにできるだろうか。『天気の子』のようにハイコンテクストかつ諦念あふれたものになるだろう。
(それはそれで面白いけどね。しかし、90年代生まれとしては、こういう映画がリアルタイムに自国から出てくる体験は大変に羨ましい……。)

終盤のある展開で街中に出現した大木に関する、館の執行人達の会話がこの映画を端的に象徴している。
「どうせ木材になる」
「公園になるかもよ」
「有料のね」
(うろ覚えだが要旨は合ってるはず。)

共存というと聞こえは良いが、それは結局大きな矛盾を抱えながらに進み、生きていくということだ。
そこが表層的なテーマやテクニックだけでなく、本質的な部分で宮崎アニメに通じるところでもある。
そして、そういうどうしようもない矛盾に対してすらどこか楽観的な印象であるところにも、(政治的には決して全面肯定できないものの、)国土が広大かつ経済も科学技術も絶好調である中国のライトサイドがあふれている。
テックを信じられる彼らにとって、魔法はリアリズムなのである。