きゅうでん

ブルータル・ジャスティスのきゅうでんのレビュー・感想・評価

ブルータル・ジャスティス(2018年製作の映画)
5.0
最高……!
この監督の映画の最大の魅力は言語化できない快楽を掬うところにあり、(あらすじだけ見ても全く面白くなさそう……)どう語っても面白さを完全には表現できないところがもどかしい。

あえてポピュラーな作品で例えるならば『進撃の巨人』と似た仕組みで、残酷で救いのない世界を“そこにある”と錯覚するような生活感をたっぷりに、しかもシュールギャグを挟みながらスローテンポにみせられる。
コーマック・マッカーシーも顔負けのドライな世界なのに、現実感もユーモアも奇妙なほど馴染んでいるのである。
現代においてバイオレンス映画の魅力を最大化する手法と言っても過言ではないのではないか。
特に、ブラック・グローブとグレー・グローブの珍妙かつ恐ろしい佇まいがこの手法を象徴している。その珍妙さと恐ろしさは、衣装や小道具を含めた役者の身体性、時間構成、画面構成(特に光の当て方)、スクリプトなど、映画という総合芸術ならではの技術で表現されており本当に素晴らしい。
(そして、『進撃の巨人』のヒットに続いて量産された有象無象の不条理系残酷漫画の醜態を見れば、このタイプの作品をセンス良く作ることの難しさは明らかである。)

この監督と出会えたことは2020年の映画趣味活動において最大の収穫だと思う。
前二作品もまごうことなき傑作でした。
ありがとうアトロク!