きゅうでん

ザ・ハントのきゅうでんのレビュー・感想・評価

ザ・ハント(2020年製作の映画)
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メタB級コメディ・アクションとしては満足。
例えばゲーム開始直後の「主人公だと思ってたら違った」の応酬は、観客を本気で驚かせようというよりは、そういう有象無象の「バトロワ系映画」をパロディしたギャグであろう。

一方で社会批判としては、対象があからさますぎる。
全編にわたってリベラルの欺瞞と保守の愚かさの両方が揶揄されているのだが、なんせ皮肉が分かりやすすぎて「現代アメリカ社会、こういうやついるよね〜」というあるある集で終わってしまっており、寓話に昇華しきれていない。
Netflixのシリーズ『ブラックミラー』で多くの社会派エピソードに覚えた違和感や惜しさにかなり近い。

ただ、そんな中にも光るものがあり、例えばジョージ・オーウェルの『動物農場』を本当に読んで理解していたのは……?”スノーボール”の引用は正しかったのか……?ということが判明するくだりでは、多くの映画ファンはグサッと来たのではないだろうか。
そしてなにより、この映画を前述の周辺的な理由(社会的な側面の描写)により素直に高評価できない私自身も、この映画の批判射程の範囲内なのかもしれない。おそろしい。

(本レビューは2020年に本作を映画館で見た後に書き、でも『動物農場』も読んでないくせに第3段落のスノーボールのくだりを投稿するわけにはいかないなと下書きに保存。1年以上たちようやく積んでいた『動物農場』を読み、投稿している。本作で自分に刺さったトゲは、手の届く範囲から1本ずつ抜いていくしかない。)