これは素晴らしい!ウィリアム・A・ウェルマン、ハズレが無いわ。観たのは『民衆の敵』『ボー・ジェスト』『戦場』『牛泥棒』『女群、西部へ!』だけなんだが、どれも異色でどれも忘れがたい。
本作も西部劇と言っていいのかどうか、『牛泥棒』と同じラマー・トロッティの脚本(フォード『周遊する蒸気船』『プリースト判事』『若き日のリンカン』も!)とのことで、両方とも西部劇のテンプレートを大きくはずれる大変魅力的な脚本だった。
なによりアメリカの夜が大変美しい。そこに付随する廃墟やデスバレーの岩々がなす複層的な陰影に彩られ、クライマックスの静かな銃撃戦には惚れぼれする。ノワールだよこれ。酒場の看板が完全に外れて地面へ垂れ下がる廃墟のセットも見ごたえがある。多くのシーンでほぼBGMが無く効果音も最小限で、静かな緊張感がずっと続く。
なんというか、後年のアメリカニューシネマに継承されるような乾いた撮り方のところがあって、強盗団のそれぞれのアップが切り返されるところや前後に配置された彼らのショットなどにそれを感じた。あと序盤で酒場のカウンターから馬と女の絵を見上げ、全員同じ方向へ視線を向ける群像という構図はちょっと戦前の小津監督作品ぽかった。
アン・バクスターがとても好くて、一発パンチ喰らわせるのは笑ったし頭突きもよかった。少女らしい丸さが残る面立ちで口を結んでいるようすはちょっと高峰秀子を髣髴とさせる。彼女は射撃の名手で、祖父とともにアパッチ族と友好的な関係にあるという設定も好い。なんと言ってもアメリカの夜で背後が明るく縁取られ、完全に逆光となり顔も見えない彼女が正面に向かって銃を撃つショットが素晴らしかった。