るる

グッバイ・クリストファー・ロビンのるるのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

製作発表時から見たかったやつ! 二年越し。期待とは違ったけどDVDスルーとはいえ見られて良かった。

ドーナル・グリーソン、アップになるとドーランが濃ゆい…? 全体的に映像が地味で簡素だったのは物足りなかったけど、プーさんのエッセンスを随所に感じられたのは良かった、かな。

花火、そして戦場の火、ハエがたかる死体の山、扉を開けると舞踏会、「男でしょ、リードして」という言葉に動揺する、「私の夫だけ生還したから妬んでるの」、戦争を知らない人々、戦場でタイプライターを打っていたとジョーク、凄まじい…な。

矢継ぎ早に繰り出されるイメージ、大人の男として戦争に行かなければならなかったアラン・ミルンことブルー。

夢と現実の区別がつかなかった、言葉にされちゃうと前段が…でもわかりやすくていいか。

出産シーン、台詞のやりとりが、今の映画という感じ。シャンパンの栓を抜く音に動揺する、「私もこの音が苦手だ」戦場を知る者たち、フラッシュバック。子供の抱き方の下手くそさ、出産に立ち会わなかったブルーの、未知の子供に対する戸惑い、不器用さ。

男の子は大きくなると戦争に行ってしまう、また待つことになる、と恐れる妻。「戦争のおかげであなたのような優秀な女性が男不足で結婚せずに子守をしてる」とヌーに、デリカシーのない妻。

戦争と女性の社会進出の関連は『人生はシネマティック!』でも触れられていたけど、大事な指摘。結構露骨にフェミニズムを指向してるし反戦映画だなと。今の映画だ…マーゴット・ロビー、派手な見た目を生かして、うまくキャリアを積んでると思う、こんなに嫌な役なのに、好感。

喜劇作家をやめて、価値あることを書きたいというミルン。
トラウマを抱えた作家とゴージャスでナイーブな妻、不安しかない。
そして大人に愛されたがっている息子、つらい…あの笑顔、いかにもモンロースマイル、子守りのヌーに拠り所を見つける、そうか…

しかしブルーがトラウマに怯える描写は、ディズニー映画『プーと大人になった僕』で「ヒイタチなんていない」と言い聞かせていた、大人になったクリストファーロビンの姿と重なって、あちらを先に見ておいて良かったな。ハエはハチと思えばいい、森には熊がいると思ってたらしい、アイディアが少しずつ。

書かない作家なんてと責める妻、息子は邪魔者扱い、やめてあげてよ…国の未来を憂えるミルン、思想と文学が不可分の繊細な作家、反戦文学なんて売れない、昔ながらの文学事情、いや、いつの時代も変わらないか…

風船が割れる音に怯える、辛いけど、プーのエッセンスを見つけるのは楽しい、

妻不在のひととき、息子と少しだけ仲良くなる、ぬいぐるみたちと食卓を囲む、息子のために童話を、

ドーナル・グリーソン、ユーモアを口にして息子と遊ぶポジティブな姿と、トラウマに怯え息子との関わり方がわからないネガティブな姿が同一人物としていまいち繋がってなくて、名演とは言いがたいと思う、でも描こうとしてる物事が好きよ

風船を割る遊びでトラウマを克服、あのアイコンタクト、良かった、彼がアーネスト、挿絵画家のシェパード…

「遊びながら書いてる」良かったねと思う、が。

大切な物語を出版社に送ってしまった妻。うわー。

ゴシップ記者、きっつい…いやもう、ありとあらゆることが、きっつい…
マスコミに追われるグロテスク、なぜだか『完全なるチェックメイト』『ビッグアイズ』あたりを連想した、もっと露悪的に撮ってくれても良かったけど、十分伝わってきた、
どうせならミルン視点に絞って見せてほしかった気もするけど、彼は息子が人々に囲まれながらも戸惑い寂しがっていたことに本当に気付いてなかったんだろうか…それなら、クリストファーロビンもといビリームーンに寄り添う形なのは良かったかな。

ナニーに嫉妬する妻、最悪だな…「気にかける? お産で死にかけたのよ」「ウシでも子供は産めます」ヌー、お見事…あの出産シーンがこう繋がるかと、すごいやりとりだった。

寄宿学校での壮絶なイジメ、普通の、男らしい男として、戦場へ行くことを望むようになったクリストファーロビンことビリームーン。なんという皮肉か。

「見なければなかったことになる」妻の哲学…

でも生きてた、良かったね。ドーナル・グリーソンの悲しみの演技、新境地かな。悪くなかったけども。

例の特別な場所で二人寄り添う、プーさんファンにとってはショッキングだけど、これまで通り物語を楽しむことは許してもらえたような、ちょっと複雑な気分になる内容だった、原作の伝記本を読みたいかな…

ディズニーでアニメ化されたのは66年なんだな、あれから一体どういう経緯でアニメ化を許可したのか…メアリーポピンズ誕生秘話を描いた『ディズニーとの約束』を連想しながら、どんなふうに権利を売ったんだろう、と考えてしまった。

あの妻、息子の希望通り息子を戦場に送った夫を責めて、息子の生還を喜んで、フェードアウトしてしまったけども、ブルーが彼女にキレる姿を見たかった気もするな…

改めて色々読み直したい
るる

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