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オリエント急行殺人事件ののらのレビュー・感想・評価

オリエント急行殺人事件(2017年製作の映画)
3.0
数あるミステリーの中でも最も有名といえるオリエント急行殺人事件の映画化でポワロをケネス・ブラナーが演じる。

最も有名なエピソードなため、トリックの部分は知っている事が前提になっている。実際本作は宣伝の段階で犯人を明かす形になっている。つまり誰が犯人なのか?よりも、犯人たちの犯行動機やポアロがどう犯人を追い詰めていくのか?という部分に焦点が当てられている。

元々完全犯罪であると同時に完成された物語なので普通に作れば失敗することの無い作品といえる。そして本作も悪い出来では無い。しかしオリエント急行殺人事件自体が何度も映像化されている上に、どれも非常に高いクオリティの作品揃いのためにそれらと比較すると見劣りしてしまう。

名作と名高い1974年版と比較するのは流石に不公平だが、例えばデビット・スーシェ版が法による正義を下せない相手に、誰が正義を下すのか?という現代的な問題を扱っているが、本作ではそのような現代的な要素がない。代わりに冒頭のエルサレムのシーンやマックイーンを追うシーンなどアクション要素が多くなっている。

全体として悪い映画では無いものの、ポワロを演じるケネス・ブラナーがイギリス人にしか見えなかったり、近年のオリエント急行を扱った映像作品に共通している事だが線路の幅に対して車内が広かったりする点が気になる。また度々映像化されている作品という事を考えれば本作ならではの切り口が欲しところだが、残念ながら本作はそういった要素に弱いため、同じ話だったら1974年版を見れば良いと思わずにはいられない。
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