「オリきゅう、ひとつ」
そうわたしが口にすると、大将は黙って頷いた。
ほどなくして、寿司ゲタに所狭しと並べられた12貫の宝石が目の前に差し出される。目が眩むような高級食材のパレードだが、この裏メニューにはひとつの仕掛けがあるのだ。
すなわち、「これらの中に潜んだスーパー閉店間際寿司を当てよ」。それに成功したとき、代金は無料となるのである。
わたしは口髭に米がつかぬよう丁寧に、そして敬意を払って一貫ずつと対峙する。うむ…どれも美味い…難問だ。
「大将、まさかとは思いますが、どれもがスーパー寿司ってことはないでしょうな?」
「……………」
風に窓が鳴っている。
「大将、それにしてもこの小さな寿司ゲタに12貫とは、これが本当の『スシ詰め』というやつですかな」
「……………はっはっ」
「「はっはっはっはっは」」
外は大雪で、どうやら帰る術もない。