おら 泣いてばっかりいて
栄ちゃんに借りた手ぬぐいが うちに何本もあんだよ
思えば栄二に足りなかったのはユーモアだ。世の不条理に効き目のある薬は笑い以外にないではないか。
さぶはさながら聖書的な「待ち続ける人」。そんなさぶに悪魔が取り憑いたかのように告白させる演出には驚いたが、結末では栄二に何も語らせなかった映画の方が好きだ。柳の枝をつかんでただ嗚咽する栄二の背中に語りかけるさぶ、これで涙腺は決壊しました😭
映画と原作は少し違っていた。小説では、栄二が石川島の人足寄場の体験を通して大きな視点を手にする所が描かれていた。スピでいうワンネスみたいな つながり感覚。
この世に完璧な人間など一人もいない、物事をやや狭く捉えがちだった人間が再起する。たった一度の挫折で物事を諦めていいはずがない。
この作品は友情などという言葉で片付けられる陳腐な話ではない。もっと、人が生きることの意味を極限まで見つめていた。人間はどこまでそこにいないものを信じることができるのか。信じ抜けるのか。待つ人がいる限り何度でも立ち上がることができる。人の生きる価値はそこにしかないのかもしれない。何度も勇気をもらえる作品。