革芸之介

よみがえりの樹の革芸之介のレビュー・感想・評価

よみがえりの樹(2016年製作の映画)
4.3
中国のチャン・ハンイ監督による初の長編映画なのだが新人とは思えない完成度の高さに驚愕した。ちなみにジャ・ジャンクーのプロデュース作品

撮影スタイルがロングショットの長回しがメインで、人物同士の会話シーンでもアップの切り返しでは撮らない。冒頭の枯れ木になってしまった果樹園を歩く二人の人物の長回しショットから被写体の枯れ木にキャメラがティルトアップするオープニングで監督の才能がわかる。

死んだ母親の霊魂が息子に憑依する場面では、枯れ木の森の斜面の上部画面右から息子がフレームイン(この時点で母親の霊魂は息子に憑依している)そして斜面の下にいる夫(息子からみたら父親)と会話するシーンは斜面の上下、高低差を効果的に使った見事なショット。

山間の田舎の村に唐突に映し出される工業地帯や集合住宅団地が田舎の風景に奇妙な違和感を醸し出す。巨石をみんなで動かそうとロープを引っ張りゆらゆら揺れる巨石の不条理な動き、逃げたヤギが木の上にいたり、田舎道を疾走する三輪バイクなど印象的なシーンが多数ある。

本作では死人の霊魂は動物にも憑依するのだが、犬や鳥に憑依した場面の根底に漂う変なユーモア感覚。

本作を観て思い出したのがアピチャッポンの「ブンミおじさんの森」。死者に対する考え方が「ブンミおじさんの森」に似ているなぁと感じた。
革芸之介

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