ベルサイユ製麺

スリープレス・ナイトのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

スリープレス・ナイト(2017年製作の映画)
3.4
…子蟹は困惑していた。
闇サイトを通して臼、栗、蜂、そして牛糞にオファーしたつもりだったが、待ち合わせたジョイフルに現れたのは臼、臼、臼だった。(牛糞は衛生責任者である副店長に片付けられてしまった。)「栗とか蜂とか、分かりやすく殺傷能力がありそうなヤツに憧れていて、それで身分を騙ってしまって…」彼らが涙ながらに語るのを気の毒に思い、蟹はこのメンバーで決行することにした。…悲願の仇討ち、猿殺しを。

栗と蜂の役は、ライターとスプレー缶、テイザーガンで代用出来る。牛糞は、ローションがちょっと残っていたからそれで良いだろう。それより不安なのは、臼達がやたらと小さく軽いことだ。ホントは彼ら、パーティグッズとかなんじゃないのか?「やっちまったな!」とかそういうやつなんじゃ…。この臼達で猿を押しつぶすのはそれなりに時間がかかるぞ。三つの臼で、押しつぶすのは、夜までかかるだろう。スリーの臼でプレス殺すにはナイトまで…


今作『スリープレス・ナイト』はハリウッドリメイク作で、オリジナルは昔話、ではなくてフランス・ルクセンブルク!・ベルギーの共作で、オリジナルも何となく観たような気がしますが、記憶は完全に消去済みです。ラッキー。

刑事ヴィンセント(ジェイミー・フォックス)と相棒ショーンは、犯罪組織の輸送車を強襲、派手なドンパチの末に大量のコカインを強奪。更に犯行を隠蔽する目的で自ら事件の調査を志願します。
彼らを漠然と怪しんだ内務調査官のジェニファーとハドソン🐝はヴィンセントに張り付き、彼の行動を監視します。
実は!ヴィンセント達が盗んだコカインはカジノを経営するルビーノが、超大物ギャングのノヴァクの為に用立てた物で、奴等はもうめちゃくちゃに怒っている!ノヴァクは、身内を逆さ吊りにしてピッチングマシンでボールをぶつける様な、ユーモアと革新性と残虐性が入り混じったヤバイマンなのだ!
犯行の様子をツイッターに挙げて炎上、身分バレした(←嘘ですよ)ヴィンセントは、息子と一緒に居るところをルビーノの手下に襲撃され負傷、息子は連れ去られてしまう!息子の身柄と交換にコカインを要求されたヴィンセントは止む無くカジノが入るホテルに単身乗り込むが、目を離した隙に調査官ジェニファーにコカインを持ち去られてしまう…。

☺︎面白ーい。ホントにオリジナルの方観てたかな?自信なくなってきた…。
先ずなんつってもジェイミー・フォックスかっちょいい!ホント拳銃が似合うんですよね。『ジャンゴ』見直したくなりましたよ。
映画の尺は100分以内、後半の舞台はホテルの中だけとなかなかのコンパクトさ、ソリッドさなんですが、そのおかげで映画の集中力が増している気がしましたね。ヨーロッパコープ制作物みたいに腰砕けにもならないし、どのシーンもだいたいいつも面白い。
割れたシャンパン瓶でブッ刺すとか、包丁で斬り合うとかアクションも愉快。息子くんの活躍、家族愛も(クレソン的な彩り程度の扱いですが)ちゃんと描かれてて至れり尽くせり。最近この手のアクション物は韓国・アジア映画の十八番みたいな印象有ったのですけど、久しぶりにアメリカ映画で満足できましたよ。
中盤で想定外の展開が有りまして、結構テンションが上がったのですが、よく見るとジャケットにデカデカと記載されてますね…。ネタバレせずに観た方が断然面白いと思いますので、ジャケットは見ずに!レンタル店にも目隠しをしてボールギャグを咥えて、後ろ手に縛って這いつくばって向かってください!!車には気をつけて!おススメです!

…結局、蟹と臼達は猿を殺す事は無かった。猿は、両親蟹を殺めた直後、自らの犯した罪の呵責に耐えかねて、樹海に入ったというのだ。何という身勝手さだ。臼達は憤慨しながら、その瞳(?)には安堵の色がありありと伺える。そうだ。考え様によっては3つの臼達を猿殺しにせずに済んだ訳で、憎しみの連鎖は猿の決断により断ち切られたとも言える。しかし…。
蟹の心を支配するドス黒いモヤモヤとした感情は、落とし所を失い胸の辺りで暴れまわっている。ジョイフルのボックス席で、蟹は臼達にか細い声で聞いた。「君たち、誰か憎いヤツっている?」臼達はしばし考え「…杵?たまに、やり過ぎだろとか思うけど…あいつ有っての俺たちだからなぁ」と答えるとまた(カニ)ピラフを掻き込みだした。杵有っての臼。猿有っての…。…拍子抜けした蟹は、コーヒーを啜りながら、このコーヒーっていつもこんなに苦かったかな?なんて思った。ブクブク…。