無意識の思い込みと偏見
映画を見る前って、ある程度のあらすじを頭に入れて見ますよね。それすらある意味ミスリードを誘うような作品でした。
パッと読む限り、黒人差別が物語に絡んだストーリーなんだなと思いますよね。
実際に序盤から黒人の主人公が恋人の両親(白人)に会うことを不安げに語ったり、車の事故を起こした後の警察官とやりとりなど、やたら人種差別を意識したシーンが続く。
恋人のお屋敷に到着した後も、
"黒人女性が台所仕事してるから家政婦さんだろう…"
"黒人男性が庭で薪割りしてるから使用人だろう…"
そんな勝手な思い込みが、その後の「何かがおかしい…」に繋がってくるんですね。
お屋敷に集る白人たちも主人公に対してウェルカムな雰囲気で迎え入れますが、実はそこにある思惑がある訳です。
彼らのこうした態度は白人リベラル層に向けた皮肉として描かれているように思えました。
主人公の親友がいいキャラでしたけど、あの気の良い感じや早口でまくし立てる口調とノリが、僕らがイメージする黒人の姿そのものなのも可笑しかった。
全体的に、そういうステレオタイプな思い込みを逆手に取った作りになっているのが面白いと思いました。
だから観る人によって色々な捉え方ができると思うんです。多人種社会のアメリカでヒットしたのも頷ける。
逆に日頃から人種問題に直面しない日本人の僕には、この作品の本当の魅力は理解できないのかもしれない。
今作の監督はジョーダン・ピール。
自虐的とも言える"アフリカ系アメリカ人あるある" は、黒人コメディアンでもある彼ならではの視点とユーモアによるものだったんですね。
しかも、これが初監督作品だとは！
だけど正直、物語自体はそこまでの驚きはなかった。
物語の根底に関わるネタが、以前見たケイト・ハドソン主演の「スケルトン・キー」というホラーに似ているなと思いました。
しかし、素晴らしいのは伏線の張り方と回収の仕方。
これがとにかく見事で、後半に怒涛の勢いで謎が明かされていくのはすごく気持ちがよかった。
ラストまで見終えて、改めて思い返すと"もしかしてあそこも伏線だった⁉︎" と思いゾッとするシーンも多く、全てを知った上でもう一回見たら新たな発見ができそう。
