カルダモン

キックスのカルダモンのレビュー・感想・評価

キックス(2016年製作の映画)
4.2
非モテの15歳ブランドン。イケてる靴さえあれば自分だって最高の仲間入りになれるはず。自分よりも少しだけイケてて、気のいい友人であるリコとアルバート。3人のボンクラなスクールライフ。それはそれで楽しげだけど。何かが足りない15歳の心が繊細に、静かなタッチで描かれる。


ある日、路上の怪しいバイヤーから超イケてる靴『エア・ジョーダン1』を購入する。ニセモノや盗品である可能性などこの際どうでもよかったのだろう。ブランドンにとって憧れの、赤×黒が輝いて見える。
当然のようにイケてないボンクラ15歳がそんな目立つものを履いていれば嫌でも目立つわけで、人気のない帰り道なんかは超危険。『エアマックス狩り』なんて社会現象が平和に思えるくらい、狩られるものは靴だけでは済まない街。
カリフォルニア州リッチモンドの一角。その土地が放つ濃厚な空気が画面越しからも伝わってくる。投棄されたゴミや落書きから感じる生々しいテリトリーの気配。誰もいなくても、晴れていても立ち入りたくないエリア。
見事なまでに靴を奪われたブランドンの心には宇宙飛行士が現れ、良くも悪くも背中を押してくる。悪党のフラコと殴り合った時、宇宙飛行士が倒れたのはあの瞬間にこれまでの自分と決別したからだろう。もう宇宙飛行士は必要ない。手に入れた靴で駆け出す。


フラコの息子もまた宇宙飛行士のオモチャを手にしていて、ブランドンと対になるような関係など細かいけど登場人物たちのさり気なく深い味わいだったのが私的にはものすごくポイントが高いです。
ほんとにしょうもない願望だけど、友人2人にスポットを当てたスピンオフも見てみたいくらいで。最高のアンサンブル。
これが初の長編作品となるジャスティン・ティッピング監督の今後が楽しみ。





余談
先日『エアジョーダン1』がオークションに出品され、スポーツシューズとしては最高額の6500万円で落札されたというニュースを見ました。左右のサイズが微妙に異なり、試合でのダンクシュートで粉々にしてしまったボードの破片が刺さっているのだそう。
おなじバッシュを桜木花道はタダで貰ってたね!気持ちとして100円渡してたけど笑