ベルサイユ製麺

クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

3.1
ここ数年観るようになったばかりで、過去の傑作を遡って観る気も無いという、相当緩い層です。それでも年一回、きゃりーちゃんの歌にのせてクレイアニメがのたくってるご機嫌なオープニングを観ると、涙腺に何らかの擽りの様なものを感じてしまう。しんちゃんの浸透性はスゴイ…。

野原家に不時着したUFOから現れた、宇宙人少年シリリ。シリリの不思議な力でひろし(父)とみさえ(母)は子供の姿に変えられてしまいます。2人を元の姿に戻すのを条件にシリリを彼の父親の元に届ける事に。子供の姿の野原家とシリリは父が待つという日本の下の方に旅に出ます。シリリは名前通りのデザインです。

…と、あらすじを書き出すと、私の大好物である“珍道中”感が有りますが、実際はなんだか結構侘しい…。
家族で旅をする展開なので、しんちゃんのお友達の出番はほぼ無くて、更に途中でしんちゃんとシリリの2人は家族とも逸れています。2人だけの道中はなかなか淋しい系。『E.T』オマージュ…って事もなさそうかな。勿論、不安感や淋しさがスパイスになって面白く展開するケースも有りますが、今作ではあんまりそれも無いかなぁ。ちびっこのレビュアーがいたら聞いてみたい。どうだった?
後半はしんちゃん達のおバカパワー・友情パワーで引っ掻き回して解決→大団円風という、多分よくある流れです。
うむー。笑いが少ない。しんちゃんのキャラクターに由来する面白はあちこち散りばめられているのだけど、構造的に引き起こされる様な、深く届く様なおかしさは無かったように感じました。(他の作品には有った様に思います)
で、もっと気になったのは、シリリの“子供に戻すことが出来る能力”に関係する、物語の根っこになってる問題提起の解決なのですが、それどっか行った…。
子供の世界と大人の社会の衝突は、おそらくしんちゃん映画で繰り返し描かれたモチーフなのだと思うので、全く新しい視点を提示するのは難しいのかもしれません。でも、問題だけ出して、答えを有耶無耶にするのはそれこそ子供騙しという事では?何にも無いなら、ひたすらに面白くして欲しかったなぁ…。
完全に想像ですが、ひたすらに道化る事がアイデンティティのしんちゃんは、劇場版ののび太の様に(その場限りの)成長を見せられるキャラクターでは無いので、作品毎にしんちゃんの元々の良さ=感動のタネを掘り出すのがうんと大変なのでしょう。あんまり台詞に想いを託さないタイプでもありますし。
全体的に食い足りない印象ではありましたが、鑑賞後にきゃりーちゃんの主題歌をもう一回聴いたらまあまあ満ち足りた気分になりました。自分はちびっこ以上に気分屋なのです。
ここまでの数作を観た限りでは、しんちゃんの映画は作品毎、というか監督毎に凄く差が有るのだなぁと思いました。今作がどんな塩梅かというと…好みの問題だと思います。ちびっこレビュアーの意見を聞いてみたいなぁ…。

矢島晶子さん、お疲れ様でした。彼女の演じるしんちゃんののんきさ、おおらかさに救われた方は多いでしょう。担当最終作のレビューが愚痴っぽくなってしまったのは不本意ですが、これからのしんちゃんへの期待の裏返しなのです。これからも見続けますとも!