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夜は短し歩けよ乙女のmingoのレビュー・感想・評価

夜は短し歩けよ乙女(2017年製作の映画)
4.0
わたしは毎日締め切りのある特殊な職業についているのだが、帰り道の井の頭線で車内を取り囲む色とりどりの暖簾のような車内広告に目を奪われたのはつい先日の話、待ちに待った公開初日向かうはTOHOシネマズ新宿ぼっち観である。独り身に立ち塞がるは見えない恋人いやもはや見える恋人と言ってもいいかもしれないでかさのスクリーン中央に陣取り、四方が恋人同士でいちゃいちゃし始めてもわたしは断固目をつぶらぬ所存である。でもいささか見るに耐えないのは伝えておく。この広い世の中、聖人君子などはほんの一握り、残るは腐れ外道かド阿呆か、そうでなければ腐れ外道でありかつド阿呆、と言葉を借りるならば今はいっそ腐れ外道でもド阿保でもいいから、原作に忠実かつ我が青春の森見小説を、好きな人と観たかったというのが正直な感想である。

つまりはそれくらい物語に没頭したし、「劇場版ちびまる子ちゃんわたしの好きな歌」(わたしのオールタイムベストは10歳から揺るがない)で湯浅政明の才能に戦慄して以来アニメーションだからこそ表現できる世界観に虜、とアニメをそんなに好いてもいない自分が言うのはいささか申し訳ないことを前提に話させていただく、にしても星野源の声がう〜んとか、乙女ちゃんが可愛い〜とか言うつもりも毛頭なく、青春をこじらせた者だけがわかるあるある、彼女が1番だ他人との約束なぞせいぜい5番目いやもはや彼女が1番それ以外はもうどうでもいいのである節には両の腕を天に届く勢いで突き上げたい。そんな1番の恋人を連れて観に来ているわたしの四方のカップルを心の底から羨ましいと感じたほど、幸せを分かち合っていただきたい次第である。実はわたしの人生で1番輝いていた大学時代に「ナカメ作戦」に似たような苦肉の策で好きな人と結ばれたことがあるのだが、「若さ」は今思うと今だけの凶器だ。良いことにも悪いことにも使える諸刃の刃だが、己が前向きに考え続ける限り人生は必然的に有意義になる。凶器なだけに幸せは束の間だったが…なんて過去を語ってはみたものの、所詮は人生論の押し売り叩き売り、鴨川もとい画面の向こう側のまだ見ぬ赤いスカートの酒豪と浅草で本作を肴に電気ブランでも飲んでみたいものだ。即席ラーメンのようでない黒髪の乙女と。
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