ノッチ

牧笛のノッチのレビュー・感想・評価

牧笛(1963年製作の映画)
3.0
水牛の背に乗って笛を吹きながら現れた少年は、牛に水浴びをさせて木の上でまどろむ。

牛は美しい沼からはなれ大きな滝の下へと行く。

目覚めた少年は牛のいないことに気づき、笛を吹いて牛を呼ぶが・・・。

少年と水牛の動きと笛の音に癒される、シンプルで詩情溢れる水墨画アニメーション。

田園風景の中で、牛飼いの少年と水牛との心温まる交流を表現。 

セリフや解説がいっさいないので、想像力を働かせて見るには格好の作品です。

ストーリーというほどのストーリーもない20分間に、しかし、その線と色そして動きが、驚くほど多くの思想、豊かさについてのメッセージをこちらに投げかけてくる思いがした。

中国といえば質の悪い日本の下請け動画というイメージばかりが広まっているが、文化大革命によってまさに文化が革命的に破壊される以前の、中国の良質なアニメ文化を見ることができる。

あの美的芸術は中国以外では作りえないものだったと思います。

何が良いって水牛の背中の質感。

滲んだ背景の繊細な色合いも美しいです。

水墨画のにじみを活かした水際の表現とか、ラストの鳥の大群が羽ばたいてくるところとか何度見ても凄い。

この技術、文化大革命で途絶えたのが惜しい。

文化は脆く壊れやすいと心しておきたい。
ノッチ

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