maki

ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラのmakiのレビュー・感想・評価

3.0
建築家や建築作品に関する映画は、ドキュメンタリーの方が見慣れているせいか、なかなか馴染めなかったのが正直な感想。

けれども、芸術を作ることが分析する行為と言うアイリーンと、芸術を分析することで批評するヴァドヴィッチの関係は面白い。
ヴァドヴィッチの「自由は孤独だ」と物語のはじめの方でアイリーンに言った言葉が、批評家と建築家が一緒に歩む関係を促しているにもかかわらず、作品を発表する時に彼女の名前を出さなかったのは、やっぱり彼女の才能への嫉妬のようなものがあったのだろうか。コルビュジェのE.1028に対する評価に対して、彼女の考えを代弁するのはその現れのようだった。

アイリーンは建築家として評価されないことそのものに葛藤があったというよりは、ヴァドヴィッチがE.1028を世に出す時の裏切りや、コルビュジェのE.1028に対する振る舞い、また、後に現れたペリアンの存在や評価など、そういうものを目の当たりにしていく中で、自由にやってきた中での彼女自身の自信が、勝手に奪われていくような苦しみがあったんじゃないだろうか。
とはいえ、彼らは皆、彼女の才能に対して嫉妬し、憧れていた。

建築の長い長い歴史の中でみると、近代建築というのはとても特異な存在であることに改めて感じることもできた。
maki

maki