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オン・ザ・ミルキー・ロードのalmosteverydayのレビュー・感想・評価

4.0
自然がどーん、動物どどーん、派手とか何かいうよりもはや当たり前のようにそこにありすぎて次第に感覚が麻痺してくる大量の銃撃、素直に笑っていいのかどうか一瞬身構えた結果やっぱり笑ってしまうブラックジョーク。ここらへんは安定のクストリッツァ節、特に前半は常に死と隣り合わせの戦場とは信じがたい程のどかな日常が描かれます。
特に酒場の演奏シーン、スロボダ・ミチャロヴィッチ演じるミルク屋の娘の酒豪ぐあいと堂に入った踊りっぷりが最高。奔放でワイルドではちゃめちゃにぶっ飛んでいて、にもかかわらずエロくてキュートで可憐なのです。彼女がかつて体操で鳴らしたという身体能力の高さであるとか、のちに帰還する兄の左目が義眼であるとか、この辺の伏線がいずれあのような形で回収されるとは思わなかった…。びっくりしました。

後半は命がけの逃避行がひたすら延々と描かれるわけですが、ある意味露悪的とさえ思えるほどにあからさまなCGがファンタジーと現実の境界線を示している点を抜きにしても、少々くどくて中だるみしている感が否めませんでした。ていうか監督、これってもしやモニカ・ベルッチとあんなことやこんなことがしたかったばっかりに…?と穿った見方のひとつもしたくなってしまいます。目を覆いたくなるほどむごい場面も多いけど、イチャコラ成分も引けを取らなかった。余韻を残す終わりかたはとても良かったです。悲しみと重たさと一途さと美しさと。

それにしても驚くべきは動物の描きかたで、蛇に巻かれるシーンを除けば動物には一切CGを使っていないのだそうです。えええ!音楽に合わせてリズムをとるハヤブサも、血の海にダイブするガチョウも、ミルクを舐める蛇も、口移しでみかんを食べる熊(!)も、ぜんぶ本物なのですか…?一体どうやって撮影したんだろう。わけがわからないよ。
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