♪ それならば いっその事
僕の心の中を見せられたら良いのにな
こんなにも君の事ばかりなのに
犯罪が日常茶飯事の街。
少年は事件に巻き込まれ、死線を彷徨いながらも九死に一生を得る。しかし、脳の一部に携帯電話の部品が残されたことで、電子の世界を感じるようになった…という物語。
なんとなくSFっぽい雰囲気ですよね。
あと、犯罪臭がプンプンするのでサスペンスっぽいのも否めません。
でも、違うんです。
本作は紛いなき青春物語。言いたくても言えない、触りたくても触れない。そんな“甘酸っぱさ”が大切な物語なのです。この辺りを見誤うとモッタイナイ作品なのです。
あと、配役も神懸っていますよ。
何しろ、主人公もヒロインも平凡な感じ。とてもリアリティに満ちているんです。これが知名度の高い役者さんを起用していたら…きっと、寄り添う気持ちにはなれなかったでしょう。
また、舞台設定も秀逸ですね。
というか、隠れテーマとして“貧困”を扱っているんです。高所得者たちから見下ろされる場所で、懸命に藻掻く若者たち…しかし、突破口は犯罪にしかない…そんな悲しい現実。
だからねえ。
余計に主人公たちの“甘酸っぱさ”が際立っちゃうんですよねえ。年がら年中、チュッチュッしているハリウッド映画では味わえない感覚ですよ。やるな、ネトフリ。
ただ、あえて難を言うならば。
ちょっと基本的な設定に無理があるのも事実。僕の理解力が乏しいからですけど「なぜ、脳内に携帯電話が残されたのか」という前提を上手く呑み込めなかったのです。
でも、引っ掛かったのはそこだけ。
電子を自由に扱える…というのは現代において無敵であるのは事実ですからね。主人公が無双状態になるのは当然だと思えました。
まあ、そんなわけで。
電子機器に依存している現代でも、青春の“貴い”時間は変わらない…そんな“甘酸っぱさ”を味わえる作品。たとえ、彼らの行く末が明るくなくても、今が良ければそれで良い…そんな姿勢で臨めば楽しめると思います。