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海辺の生と死のandhyphenのレビュー・感想・評価

海辺の生と死(2017年製作の映画)
3.4
「死の棘」であまりにも有名な夫婦となった島尾敏雄と島尾ミホ。本作は島尾ミホの「海辺の生と死」と島尾敏雄の著作を元に映画化したもの。
...という前提で観ると、元の知識が全くない時と知っているときで全然印象が違う映画になるのではないかと思う。(でもおそらくその辺の知識がある人は多かろうが)
この映画の主眼はおそらく戦時下の恋愛というより主人公の迸る感情にあるのかなと思いながら観ていた。満島ひかり演じるトエはよくよく観ていれば極めて激情的な女性であって(彼女はすごくうまくそれを演じているが)、何があろうと恋人を死なせない、もし死ぬなら私も後を追う、という思い詰める直情型。それに対して永山絢斗演じる朔は極めて受け身の(本人も語る通りの)弱いタイプの男である。このふたりがこの後辿る道を暗示するかのような関係性を観ている間中ずっと考えていた。
トエを観ているとそこまで急がなくても、と思ってしまう。彼女の感情の機微だけで保たせている映画と言っても過言ではない。
退屈だと感じるひとは多分会話の間の「間」がやたら長すぎるせいだろう。狙ってやっているのだろうし私自身は効果的だと思ったが、全編「間」ばかりの作りではあるので厳しいひともいるだろうと思った。
ちなみに平日昼だったせいか観客の年齢層は高かった。そして満員だった。
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