幽斎

インビジブル・ゲスト 悪魔の証明の幽斎のレビュー・感想・評価

5.0
恒例のシリーズ時系列
2016年 4.8 Contratiempo/The Invisible Guest スペイン製作、オリジナル
2018年 4.0 Il testimone invisibile/The Invisible Witness イタリア製作、リメイク

映像を使ったミステリーはこう作るべき、と言えるほど完成度は高い。スペイン映画は昔からホラーは秀作が多かったが、こんな作品に出会えるから映画はやめられない。

ミステリー初心者の方でも安心して楽しめる様に、脚本の整理の仕方にセンスを感じるし、極めて情報量の多い作品ですが、それを物語の途中で何度か区切って整理する演出の手腕がとても鮮やか。主演のMario Casasの演技も素晴らしく、監督のOriol Paulo(ロスト・アイズ、ロスト・ボディ)の文句無し最高傑作。これほどフェアでキレ味の良い結末は滅多にお目に掛かれない。年間ベスト級と言っていい掘り出しモノ。

ミステリーの世界で言う「叙述トリック」を映像化するのは意外と難しい。語られる映像の中にヒントが無ければ、アンフェアだし露骨に見せても面白くない。本作では意外と冒頭に大きなヒントが有って、物語の全体像が分る頃には、大抵のヒントが出尽くしてる。この用意周到さが鮮やかだ。ラストで「SAW」の様に復習を兼ねて走馬燈の様に伏線が明かされるが、「そうだ、確かに見たな」と観客が思うからこそ、面白い。そして椅子から飛び上がるのだ(笑)。

普通は伏線の中には台詞で語られるモノも多い。なので、字幕派は不利に為る筈だが、本作は海外のマーケットを意識してか、スペイン語で描く事を念頭に置いて、大事なトリックを映像で見せる事に腐心してるのが良く分る。監督の他の作品もミステリー系が多く手慣れてる訳だが、どうやったらハリウッドで咀嚼して貰えるか、良く考えて構成されてる。実は欧州のミステリーは独り善がりな作品が多い(特にフランス)、しかし最近ではスウェーデンの傑作「ドラゴン・タトゥーの女」を始め、大ヒットしたデンマーク産ミステリー「特捜部Qシリーズ」の様に字幕だけで十分に捜査を追える作品も増えてきた。この作品も脚本の骨格は充分ハリウッド・リメイクできる実力が有ると手放しで褒めたい。

最近はオチありきのスリラーが横行してる中で、本作は純粋にミステリーと呼べる大人向けの本格派。ワインとチーズでも用意して、じっくりお楽しみください。絶対、2度見したくなります。
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