ベルサイユ製麺

あさひなぐのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

あさひなぐ(2017年製作の映画)
2.9
…『あさひなぐ』とはいったい?
ちょっと調べてみようとグーグル検索窓に“あさひな”まで入れたところで“朝比奈祐未”というワードが出てきた。人名か?どれどれ…


ふぅ。…成る程。“あさひな”というのが、この嬢のことで有ることは大判明したが、では“あさひな”嬢の“ぐ”とは一体⁇ いや、いやこれ以上調べる必要はあるまい。観て、感じれば良い。…ところでこれ、レイティングどうなってるんだ?“ぐ”だぞ?

冒頭、メガネっ娘の女子高生…画像検索で出てきた嬢とは違うが、主人公のようだ。ははーん、ドラマパートだな。ちゃんと見る主義!

…と、このスタンスで書き続けると酷く後悔しそうなので、普通のレビューにします。しかしそれはそれで気乗りしないっすなあ…。

ストーリーは学園スポーツ物の大王道。高校に入学したばかりの主人公の女の子アサヒは、持ち前のボンヤリ感、流され、巻き込まれやすい体質のせいで、運動経験も無いのに薙刀部に入部する事になります。厳しい特訓、ひとり出遅れた劣等感に苦悩しながらも仲間の助け、そして持ち前の愚直さで少しづつ成長していき、いつしか云々っすなぁ…。

ギュギュッと、この映画、いくらなんでも端折り過ぎではないかいな?原作未読なのであくまで印象なのですが、例えば最初のガンダムの劇場版って、テレビシリーズ43話の内容を再編集して3本の映画に無理やり纏めてる訳ですが、今作『あさひなぐ』は、その3本の劇場版を更に一本に圧縮したくらいに思えます。作品のあちこちに感じてしまう問題点の殆どが、圧縮して詰め込み過ぎたことによって生じている気がします。
例えば
⚫︎主人公の家族が出ないので生活感が無い
⚫︎個々のキャラクターの個性が表面上(体型髪型、喋り方)の特徴でしか分からない
⚫︎主人公の成長に説得力がない
⚫︎クラスメイト、学校生活がフェードアウト
⚫︎ナツユキという男の子とアサヒが、どのタイミングでどうやってお互いを認識していたのかが本当に不明(元々意識していたのか、も不明)
⚫︎薙刀の細かいルールや大会のシステムが説明されない

…等々、これらは恐らく原作を読んでいる方なら“知っている”事柄なのだと思うのですよね。ひょっとするとこの実写劇場版は、一見の映画好きの事はさておき、原作の名シーンの数々を役者が演じているのを見て楽しむ事に特化した、言わば原作ファンの為のノベルティみたいな物である事を目指したのかなぁ、と置いてけぼり食らったような寂しい気持ちになってしまいました。特にナツユキの件はマジで!分からん。
時間が足りなくて情報が盛り込めないのは致し方無いとして、無駄なコメディパートで長々時間食ったり、話が進みそうになると軽くボケを入れて腰を折ったりするのは、(原作由来なのかもしれませんが)集中力が削がれて全く良くないです。多少テイストが変わったとしても、ギャグの代わりにシビアな心理描写やシリアスな演技を入れた方が作品は締まったと思います。凄く突き放した感じで言えば、恰も先に作られて凄く評判の良い『○○○○○』のフォーマットをお手軽に拝借して、ちょいちょいと組み合わせて、結局魂を入れ損ねているみたい。

肝心の薙刀の描写ですが、最初見たときカッコイイ!と思いました。脛当てが新鮮!とか。…でも直ぐ何も感じなくなっちゃった。なんというか、一般的に馴染みがないであろうこの競技を魅力的に、カッコよく見せる為のアイディアが何も無いみたい。ただふつうに分かりやすい構図で撮って、無難に編集してるだけ。アメリカでもロシアでも韓国でもインドネシアでも、もう世界中でアクションの新鮮な見せ方って創意工夫、研鑽されまくっているというのに、コレはただ撮るだけ。しかも、面を被ってるから肝心なシーンの表情は分からない。なんなら選手もどっちがどっちだか…。ここの見せ方に勝算が無いんならそもそもこの企画やる意味無いのではないかしら?

アサヒに薙刀の基礎を叩き込む尼僧さんがメンター的な位置付けで設定されているのですが、この人が意外にも凄く饒舌なんですよね。「ほほう、そうきたか」とか「面白い…」みたいな感じで。そんなの表情の変化ぐらいで充分だと思うのだけどなー。そんなに観客信用できないですか?なんか全般的に説明し過ぎなのが気になります。

終盤、クライマックスで、あるキャラクターが試合に出ない展開があるのですが、その理由が“親戚の結婚式”…。ひょっとすると原作そのままなのかもしれませんが、なんと愛の無い展開なのかと絶句しました。仮にも苦楽を共にした仲間なのに、せめて故障とかにすれば良いのに…。(ワザと出なかったみたいな展開の可能性があるのかな?その場合は汲み取れていない私が悪いのです。)

自分は坂道…というか秋元界隈が全くわかってないので、どなたがアイドルさんでどなたが役者さんなのか判別出来なかったのですが、スティッキーなモノローグなど演技のテンションはまさに80年代のアイドルムービーみたいでキッチュな良さが有ったと思います。誰か1人が技術的に抜きん出てたりするとちぐはぐな印象になっていたと思うのですが、(中村倫也さんの芸達者感は完全コメディリリーフなので問題なし)そこに関してはチームワークで乗り切れていたと思います。原作のコアなファンは怒るかもしれないけど。

あと、この作品に限らずですが、若者向け邦画で青春ぽさを漂わせたい時に画面をスモーキーにするのはマジでやめろバァカ、と思います。もっと目が悪くなったのかと思うよ。

…ちょっと愚痴の羅列みたいになってしまったのですが、全てひっくるめてコレが今の邦画の平均ぐらいかなぁとは思います。このくらいの作品がいっぱいある。だから問題無い、のではなくて、作り手が「このぐらいで充分でしょう」って思ってそうに見えるところが問題なのですが。違ってたらホントにすいません。

明らかに良かった点も有ります。ロケ地が全体的にうちの近所だった事。これはもう、どんな作品でも嬉しくなっちゃいますな。加点対象です☺︎
自分、高校時分は身体が弱くて部活やってなかったので、みんなでワイワイしてるの楽しそうで羨ましかったです。薙刀カッコイイですね!ブンブン振り回して、ソロモンで連邦の白いの追い回したいです。…それにしても薙刀って少女漫画とかでは人気の部活の印象なんですけど、実際は違うのかしら?マイナー?
あと、弓道、剣道、乗馬なども習得すればハイラルで冒険が出来そうですね。


結論: …この作品は映画じゃなくて連続ドラマにした方が数倍良くなったと思います!コレはきっとソレのパイロット版なのだな。よし納得!あとは“朝比奈”嬢の方がまだ良く分からないなあ…。